DX狂騒曲#12Photo:Erik Isakson/gettyimages

DXの成功に欠かせないのが、組織と推進役になる人。DXプロジェクトが全社を巻き込み、うまく連携するものでなければならないし、さらにそれを引っ張る人も必要。じゃあ、どんな会社や人がいたらDXは成功するのかな?メンバーが出した驚愕の答えは?特集『企業・ITベンダー・コンサル…DX狂騒曲 天国と地獄』(全14回)の#12ではIT業界インサイダー座談会「組織と人」編をお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

【座談会参加者】
 Henry @HighWiz 大手SIerの大規模プロジェクトのPMを経て総合コンサルへ転身
 ケビン松永 @Canary_Kun  大手SIerから独立してフリーのITコンサルやってます
 よんてんごP @yontengoP ブラックIT業界を渡り歩く病人ツイッタラー。薬を飲み忘れる
 むぎSE @MUGI1208 社内SE社畜ツイッタラー。炎上プロジェクトの遭遇率が高め
 shin @shin_ofshins ウェブとアプリに詳しいコード書く系スタートアップ経営者
 かち @kachi_saas サーバー系インフラ保守から紆余曲折を経て外資系SaaS勤務
 SW @Diamond_IT_SW コンサルからメーカー情シスに移籍した企業哀戦士

「正直、DXより執行役員のパソコンを取り換える方が優先順位が高い」

――今日は組織の話です。DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するに当たって、こういう組織体だったらうまくいく、というのはあるんでしょうか。

Henry  うまくいくかは置いておいて、よくあるのは情報システム部が旗振って推進するパターンですよね。

 でも、現行システムの運用保守やヘルプデスクといった役割と、将来のIT施策の企画・実行といった役割があって、前者と後者では求められるスキルもマインドセットも違うのに、全部一緒くたに情シスでやれってのは無理があると思ってる。特に事業会社の情シスはSIer(システムインテグレーター)ではないし、当然ながら大規模なシステム開発のノウハウもないので、突然「DXの司令塔になれ!システムを開発しろ!」と言われても困るよね。

よんてんごP(4.5P) そう。電話が壊れたとか、パソコン壊れたとか、SIerに頼んだらその都度料金が発生する話を情シスが面倒見てる。DXプロジェクトを実行したからといって、そういった社内の「ちょっとすぐ来てよ」業務はなくならない。DXを達成するとしても、それらの業務の改善とかがなければ、情シスには恩恵がない。

むぎSE 正直、DXより執行役員のパソコンを取り換える方が優先順位が高い。それに、兼任すると進捗も遅いですよ。既存の業務が剥がせないので、ちょっとした改修とかこなすのが精いっぱい。

SW やっぱり情シスも高度IT人材をそろえた方がいいよなぁ。ユーザーの問い合わせ対応は極力外部に任せるべき。そうしないと本来情シスがやるべき仕事に手を回せない。と、PCトラブルについて解決できないヘルプデスクから結局エスカレーション(上司への報告と相談)を受けながら思う。しかも、こういうのに限って難度が高く時間がかかる……。

むぎSE とにかくみんな兼務で考える時間がないんですよね。「DXやろう」と考える時間は自分の労働時間の半分とか4分の1とかになっちゃう。いや、もっと少ないかも……。

4.5P そう、中小企業にとってはプラスアルファの仕事になってるだけなんだよね。やる気も出ないし給料も上がんねえし。

――ですねえ。情シスが喜んでDXプロジェクトに従事できてる会社って、実際どのくらいあるんでしょうね?「ITシステムを自社で内製化できるようになる」というのもDXの目標としてよく挙がりますけど。どんな人が社内にいれば、DXは成功するのでしょうか?若手、管理職、経営陣という「縦軸」、事業部、情シス、DX部門、コンサルという「横軸」、それぞれが何をすべきなんでしょうか?