いかに顧客の物流やサプライチェーンのサステナビリティ(持続可能性)を支えていけるか――。いまや物流事業者の価値や存在意義は、その解決能力にかかっているともいえる。三井倉庫ホールディングスは、いち早くその課題に正面から向き合い、パッケージ化されたソリューション「SustainaLink」を提示した。

三井倉庫ホールディングス
野口 敏
経営企画部ESG推進室長

 少子高齢化による労働力不足、頻発・甚大化する自然災害、そして新型コロナウイルスの感染拡大――。ここ数年、物流を巡る新たなリスクが顕在化し、その持続可能性に黄信号がともり始めている。SDGsやESG経営の重要性が増す中で、カーボンニュートラルの実現に向けた新たな取り組みが求められるなど、物流への社会的要請も日増しに高まっている。

 そうした中、三井倉庫ホールディングス(HD)では物流の持続可能性を支援していく新たなサービス「SustainaLink(サステナリンク)」の提供を開始した。

 同社経営企画部ESG推進室長の野口敏氏は「足元では新型コロナの感染拡大によりサプライチェーン(SC)の混乱が世界中で進むなど、持続可能なSCを構築する必要性が改めて高まっています。そこで、物流が直面するリスクに対応した『お客さまのビジネスを止めない』サービスが必要との思いから、サステナリンクを構想しました」と開発の背景を語る。

 同社戦略営業部長の伊藤智光氏も「これまで当たり前のようにモノづくりや消費活動を支えてきた物流が当たり前でなくなりつつある状況の中で、物流会社として何ができるのか。やはり、持続可能な物流の構築こそが物流事業者としての責務であり、今後の競争力を左右すると考えました」と思いを述べる。

マトリックスを使ってリスクの「現在地」を把握

 では、サステナリンクとはどのようなサービスなのか。まず物流やSCを継続していく上でのリスクを「環境」「労働力」「災害」の三つに分類。その上で、それぞれのリスクについて「知る」→「可視化(見える化)」→「改善」という3ステップを通じて課題解決に導く。

三井倉庫ホールディングス
伊藤智光
戦略営業部長

 利用者にとっては、3×3の九つのマトリックスによって自社の課題がどこにあるのか、現在地がどこなのかを簡単に把握することができる。「どんなお客さまでもサステナビリティに関して何らかの課題をお持ちです。物流におけるさまざまなリスクを網羅的に捉え、現状を見える化した上で、具体的な改善につなげる。その一連のプロセスを分かりやすく整理してパッケージにしたことがこのサービスの特徴です」(野口氏)。

 このうち環境リスク対応では、CO2排出量の「測定=見える化」というサービスが注目を集めている。「荷主企業の多くが、自社のSCで排出しているCO2排出量を把握できていないか、仮にできていたとしてもその精度や信頼性に問題があるというのが現状です。しかし、今後は脱炭素化に向けた社会的要請はさらに高まり、現状の対応では立ちゆかなくなります。まずは排出量の可視化を通じて自社の立ち位置を知ることが重要です」(伊藤氏)。