「破綻」と言われても
おかしくない日本の財政状況

 皆さんの友人や親戚で、年収400万円なのに毎年500万円をどこかから借金してきて900万円使うような生活をする人がいたら、「あなたは破綻ですよ」と警告すると思う。収入の倍の生活費をいつまでも維持できるはずがない。

 現在の日本の財政はこれに近い状況である。政府の税収は40兆円を少し上回る程度なのに、歳出である予算規模は90兆円を超えている。埋蔵金を活用するなどいろいろな工夫をしてやりくりしているが、それでも40兆円近い新規の国債発行、つまり借金の積み増しをしているのだ。

 GDP(日本は約500兆円)の8%以上の財政赤字を出し続ける社会は異常である。それでも景気が悪いので、家計や企業の貯蓄資金が国債を購入してくれる。それで何とか持っている状況である。こうした財政状況をいつまでも続けられないことは明らかだ。

 連載の前々回でも述べたように、仮に景気が少し上向きになって企業貯蓄が投資に回るようだと、国債金利が上昇してしまう。1000兆円を超える公的債務を抱える政府にとって、金利上昇は財政運営に非常に大きな打撃を与えるだろう。

 それでも、今後この財政状況が改善する見込みがあるのであればまだよい。残念ながら、高齢化が進むほど社会保障費は増大する一方なので、歳入が増えないかぎり赤字は膨らむばかりである。消費税を10%に引き上げる法案が通ったので、この増税が実現すれば一時的な助けにはなる。ただ、この程度の増税では一時しのぎにしかならない。今後増え続けることが確実な社会保障費を賄うには到底十分とはいえない。

 大幅な財政赤字が出てしまう理由の一つは景気低迷である。景気が悪いため税収が落ち込み、それが財政赤字幅を広げている。もう少し景気がよくなれば税収が増える。財政運営はずいぶん楽になるはずだ。