ロシア頼みのエネ調達、対応遅れた欧州に試練Photo:picture alliance/gettyimages

 ウラジーミル・プーチン露大統領によるウクライナ侵攻は、ロシア産天然ガスへの依存からの脱却に消極的だった欧州の背中を否が応にも押している。しかしながら、次の冬場を迎えるまでに十分な代替のエネルギー供給を確保できないリスクが高まっており、欧州市民の暖房や工場稼働に支障をきたす恐れがある。

 ロシアが経済制裁への報復として欧州へのガス供給を打ち切るか、あるいは欧州が購入を停止するかにかかわらず、将来的にロシア産ガスの供給が劇的に減る事態に備える必要があるというのが当局者の一致した見解だ。

 欧州はこれまでロシアからのガス供給に頼りきっていたことから、代替先からの供給確保に必要なインフラ設備をほとんど整備してこなかった。欧州がロシア産ガスから脱却することは歴史的な政策の転換となる。

 欧州はガス供給の約4割をロシアから調達しており、依存度はここ数年に強まっていた。シンクタンクのブリューゲルによると、西側諸国が制裁でロシア経済に打撃を与えることを狙う中でも、欧州は1日当たり最大6億6000万ユーロ(約830億円)の代金をロシアに支払っている。これはロシアがウクライナに侵攻する前に比べ3倍の水準だ。

 欧州委員会のカドリ・シムソン委員(エネルギー担当)は3日、欧州議会で「域内のエネルギー市場を不安定化させる、あるいはエネ政策に影響を与えるほどの力を第三国に与える余裕はないことが痛いほど明白になった」と述べている。