後悔しない認知症#10写真提供:バイオジェン社

昨年、米国で薬事承認された「アデュカヌマブ」。アルツハイマー型認知症の新薬として、米国では約20年ぶりの承認となった。「認知症を根治できる時代がやって来た」と、患者からの期待は高まる一方だが、専門家や現場からは失望の声の方が多い。特集『決定版 後悔しない「認知症」』(全25回)の#10では、アデュカヌマブの本当の評価、そして症状を抑えるにすぎない上、選択肢の少ない認知症の薬物治療を、今後変えてくれる新薬は登場するのか。その可能性を探る。(ステラ・メディックス代表/獣医師/ジャーナリスト 星 良孝)

「認知症が治せる」と期待のアデュカヌマブ
意外にも専門家からの評価は低い

「アデュカヌマブの有効性の根拠はとても弱く、価格は低く設定すべき。今後、有効性の根拠が改善されたら、再び価格を上げていくべきだ」

 世界的に評価の高い医学誌である米国の「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」の昨年11月に配信された編集長インタビューで、編集長スティーブン・モリシーからの新たな認知症薬の評価についての問い掛けに対し、米カリフォルニア大学バークレー校医療経済学教授であるジェームズ・ロビンソンはこう応じた。

 アデュカヌマブは、認知症の大部分を占める「アルツハイマー型」の原因とされるアミロイドβに結合し、脳内の同物質を減少させるというメカニズムを持つ抗アミロイドβ抗体だ(下図参照)。

 2007年に、エーザイがスイスの製薬企業であるニューリミューン社から導入し、17年10月からは、米バイオジェンと共に全世界での開発と製品化を進めてきたが、21年6月、ようやく米国食品医薬品局(FDA)によって薬事承認。FDAが承認するアルツハイマー型認知症薬としては約20年ぶり、しかも既存薬とは異なり「病気の進行を食い止める」効果があるという触れ込みの新薬のニュースは瞬く間に世界を駆け巡った。

 しかし患者や市場の期待とは裏腹に、医療現場では旗色が悪い。