ウクライナ侵攻による世界経済への影響が深刻化している。国際政治学者のイアン・ブレマー氏は2018年、あと数年で世界に「リセッション(景気後退)をもたらす地政学的なショックが生じる可能性が高まっています」「戦争につながる可能性があるため憂慮すべき状況です」と“予言”。「ロシアのサイバー攻撃」にも言及していた。当時のインタビューを再掲載する。

「週刊ダイヤモンド」2018年11月3日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

――市場の変動と地政学リスクは必ずしも連動していませんが、これだけ地政学リスクが高まると、市場が危機的な状態に陥ることもあり得るのではないでしょうか。

「景気後退をもたらす戦争が発生」、イアン・ブレマーの“予言”が的中【再録】1969年11月生まれ。米国の政治学者。スタンフォード大学にて博士号(旧ソ連研究)取得。フーバー研究所のナショナルフェローに最年少の25歳で就任。28歳で調査研究・コンサルティング会社、ユーラシアグループ設立。

 そうは思いません。市場は短期的であるのに対し、地政学は長期的だからです。IMF(国際通貨基金)は地政学的な状況を背景に、今年と来年の世界経済の成長率予想を3.7%に引き下げました。最近の地政学上の問題は悪いニュースばかりで、その全てが「Gゼロ」(リーダー役不在の世界)に関連しています。ただし、(危機的な状態に)なるまでにはもう少し時間がかかるでしょう。

 経済的なリセッション(景気後退)は平均して7年置きに発生していますが、地政学的なリセッションはそう頻繁に起きるわけではないからです。ただ、今起きようとしているのは、地政学的なリセッションです。

――それは、ディプレッション(恐慌)に発展するのでしょうか。

 そこまでではありませんが、そうなる可能性はあります。2008年のリセッションのときは、世界の主要国が皆ディプレッションを回避するために、景気刺激策やインフラ整備などを行い、人々を落ち着かせようとしました。

 それから10年後の今、地政学的なリセッションに突入しています。戦争につながる可能性があるため憂慮すべき状況ですが、世界中の誰もがこの事態をどうやって避けるかに関心を持っていません。

――軍事的な意味での戦争ということですか。