【寄稿】ウクライナ原発制圧でロシアが狙う利権Photo:Maxar/gettyimages

――筆者のジェフリー・S・メリフィールド氏は1998年から2007年まで米原子力規制委員会の委員を務めた。現在はピルズベリー法律事務所のグローバル・エネルギー・セクションのリーダー。原発施設、サプライヤー、技術開発者の代理人を務めている。

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 ロシアのウクライナ軍事侵攻で見逃されている点は、ウクライナが原発関連の供給でロシア企業への依存を断とうとしていたことだ。侵攻前から米国は、ロシアにとって原子力分野の最大の輸出市場だったウクライナに食い込もうとしつつあった。

 ロシアのウクライナ侵攻が始まった日、ロシア軍の戦車がチェルノブイリ原発の敷地内を走行し、ほこりを巻き上げて放射線量を上げる様子が見られた。その8日後、侵略者は700マイル(約1130キロ)離れたザポリージャ原発を制圧した。同原発には6基の原子炉がある。

 チェルノブイリ原発を掌握したことでロシアは、同原発の使用済み核燃料を自由に処理できるようになった。ロシアはそれを現地でキャニスター(使用済み核燃料輸送容器内筒)に収納したり、ロシアの再処理施設に移送したりできるようになった。どちらにしても、こうした処理はロシアの国有原子力企業「ロスアトム」に数億ドルものビジネスをもたらす。