首都圏男子「中高一貫校」、入試戦略が左右する受験生の人気【2023年入試版】この5年間で受験者数合計が3倍近くに増えた男子校「京華」(東京都文京区)

前回の連載でも取り上げたように、入試を1回しか行わない私立中高一貫校は首都圏には20校しかない。多くの学校は複数回の入試を設定して、受験生の獲得に力を注いでいる。入試日程の組み方など、各校の入試戦略で大きく人気は左右される。今回は男子校について、実倍率の比較も交えながら併願校を考えてみたい。(ダイヤモンド社教育情報)

受験生を1000人以上集めた20校

 2022年受験者数の合計が1000人以上となる首都圏の男子中高一貫校は20校ある。

 次ページの図1のグラフは、一般生向けの入試回数により色分けしてある。このうち浅野と開成以外は複数回の入試を行っている。立教新座、海城、早稲田、明治大学付属中野、聖光学院、芝の6校は2回、本郷、成城、城北、逗子開成の4校は3回、残りの8校は4回である。

 首都圏で一番多くの受験生を集める男子中高一貫校は、世田谷区にある東京都市大学付属だ。22年入試では2500人を超えた。2位の日本大学豊山、3位の本郷がいずれも2000人に届かないことからも、断トツの人気といっていい。武蔵野工業大学付属から現校名に変更した13年から、最難関国公立大を目指すII類と難関国公立私大を目指すI類に分けたコース制入試を実施してきた。5年前の18年時点でも1900人を超えており、1位だった。

 難関・上位校男子受験生定番の併願先となっている1日午後の入試だけで、全日程合計の半分近い1119人が受けている。サピックス生の動向を見ると、開成と武蔵からの巣鴨を除けば、都市大付属が午後入試受験先の筆頭に挙がっている。

 こうした勢いに意を強くしたのか、都市大付属は23年入試で6日午前をなくし、新たに念願の1日午前を導入する。6日の実倍率はII類が3.44倍、I類が9.57倍と他の回に比べてかなり高かった。募集人員を何人にするのか、それによって受験生の流れがどのように変化するのか、大いに注目されるところだろう。

 3位の本郷や6位の海城は、年ごとの増減はあったものの、5年前より2割は受験生を増やしている。一方で、中堅男子校の勢いを体現する2位の日本大学豊山は、この5年間で受験者数をほぼ倍増させた。22年は1割ほど減らしたものの、どの回も実倍率が3倍超の人気校である。5位の獨協も、21年から大きく増やして、5年前の2.6倍の受験生を集めるまでになった。

 受験生が増える要因としては、共学化(それに伴う校名変更)、新校舎、制服の変更(特に女子)が分かりやすい例として挙げられてきた。ときにはそれ以上に、入試日程や内容の工夫といった学校の取り組みが直接的に受験者数の増減に結び付く。

 例えば巣鴨である。かつては1日と2日の2回、午前入試を行うのみだった。18年に4日午前を加えて3回となり、19年には1日午後に算数1科入試を行うことでブレイクした。この間の受験者数合計を見ていくと、17年の514人から18年774人、19年は1206人と跳ね上がり、20年には2012人とピークに達した。ところが、実倍率が1日午後2.98倍まで20年に急激に高まった反動からか、21年1720人、22年1433人と緩和している。

 巣鴨と同じような動きをしたのが、20位の世田谷学園である。18年の760人が19年に1157人、20年に1768人と破竹の勢いで増えた。1日午後に巣鴨と同様の算数1科入試を導入したことが寄与したのだが、21年は1239人と大きく減らし、本科コースと理数コースを導入した22年はさらに200人以上少なくなっている。

 この本科コースと理数コースは、都市大付属のように別々の募集ではなく、理数コースに出願すると本科コースにも数えられる仕組みである。試験問題は同じだが、理数コースの配点は算数と理科が2倍となるため、理数が得意な受験生には有利である。15位の鎌倉学園も1日午後入試で受験者数を伸ばした学校だが、19年に1325人を数えた以外は、1200人前後で推移している。