ロシアをハイパーインフレが襲っても「物々交換」にはならないといえる理由写真はイメージです Photo:PIXTA

ロシア経済が西側諸国による経済制裁の影響から混乱し始めているようだ。今後、ロシアがハイパーインフレになれば、お金で物を売買するより物々交換をしたほうが良いと考える人が出てきてもおかしくない。しかし、それは大層不便なものだ。なぜそういえるのか、解説しよう。(経済評論家 塚崎公義)

ロシアが物々交換の世界になる?
インフレでルーブルの価値が急落の一途

 ロシア経済が西側諸国による経済制裁の影響から混乱し始めているようだ。既に物価は1時間ごとに上昇しているともいわれている。そうなると、売り手は紙幣の受け取りを望まなくなる。受け取ってすぐに価値が減じるとわかっているからだ。

 買い手としては、米ドルや金(きん)を持っていればそれで支払えるだろうし、そうでなくても物々交換をすれば良い、と考える読者もいるだろう。しかし、物々交換というのは大層不便なものに違いない。

 以下では、筆者が久留米大学の金融論の講義で「物々交換は不便だから紙幣があると便利なのだ」と説いている内容をご紹介しよう。

物々交換をするには
相手の欲しい物が必要

「魚屋は肉が好きで酒が嫌い」、「肉屋は酒が好きで魚が嫌い」、「酒屋は魚が好きで肉が嫌い」だとする。この場合、魚屋が肉を食べたくて肉屋へ行って、魚と肉を交換しようとしても、肉屋は応じないだろう。肉屋が酒屋へ行っても、酒屋が魚屋へ行っても、やはり相手が応じないので、3人とも自分の欲しい物が手に入らない。

 これが物々交換の不便なところだ。自分が欲しい物を持っている相手が、自分の持っている物を欲しがらないと、取引が成立しない。筆者が居酒屋へ行って「金融論を教えますから酒を飲ませてください」と頼んでも、無理なのと同じことだ。

 しかし、解決手段がないわけではない。