スタンフォード大学・オンラインハイスクールはオンラインにもかかわらず、全米トップ10の常連で、2020年は全米の大学進学校1位となった。
世界最高峰の中1から高3の天才児、計900人(30ヵ国)がリアルタイムのオンラインセミナーで学んでいる。
そのトップがオンライン教育の世界的リーダーでもある星友啓校長だ。
全米トップ校の白熱授業を再現。予測不可能な時代に、シリコンバレーの中心でエリートたちが密かに学ぶ最高の生存戦略を初公開した、星校長の処女作『スタンフォード式生き抜く力』が話題となり、ロングセラーとなっている。
ベストセラー作家で“日本一のマーケッター(マーケティングの世界的権威・ECHO賞国際審査員)”と評された神田昌典氏も、
現代版『武士道』というべき本。新しい時代に必要な教育が日本人によって示されたと記憶される本になる
と語った本の要点と本に掲載できなかった最新情報をコンパクトに解説する本連載。
毎回、スタンフォードにいる著者が最新研究から見出された最新情報をお届けしているが、今回は、A’Design Award 2020で最高峰のプラチナを獲得。車いすの概念を変える未来型車モビリティー『WF01』を開発するなど、世界中で活躍している杉原行里(すぎはら・あんり)氏と星校長との対談前編をお届けする。

パラリンピックに関わったきっかけ

【最高峰プラチナ獲得】<br />凡人でも、世界最速F1技術を<br />斬新な「車いす開発」に生かせた理由

星友啓(以下、星):今回のゲストは、株式会社RDS代表取締役社長の杉原行里(すぎはら・あんり)さんです。

杉原行里(以下、杉原):よろしくお願いいたします。

【最高峰プラチナ獲得】<br />凡人でも、世界最速F1技術を<br />斬新な「車いす開発」に生かせた理由 杉原行里(Anri Sugihara)
RDS代表取締役社長/webメディアHERO X 編集長 /4RE 代表取締役
1982年生まれ。イギリスの全寮制高校を経て、Ravensbourne Universityにてプロダクトデザインを専攻。
RDSは、モータースポーツ事業を始め、医療福祉、最先端ロボットなどの研究開発型企業。2019年にはF1チームトロロッソ・ホンダと2020年、2021年にはF1チーム スクーデリア・アルファタウリ・ホンダとオフィシャルパートナーを締結。
2013年グッドデザイン金賞受賞した世界最軽量の『ドライカーボン松葉杖』、A’Design Award 2020で最高峰のプラチナを獲得した車いすの概念を変える未来型車モビリティー『WF01』、VRで2100年の東京を体感できる『CYBER WHEEL X』などを開発。
ソチ五輪から、パラアスリートへ技術開発提供を行い、森井大輝選手などトップ選手をサポート。パラリンピックでのメダル獲得数は金を含む9個。2021年DA’C World’s 2nd Best Designer in2021。
Twitter:@AnriSugihara

星:お仕事の内容が非常に多岐にわたっていらっしゃるんですけれども、まずは先日お会いしたときにお話しされていた、センシングによるデータ活用について詳しくお聞きしたいんですが。

杉原:このプロジェクトのきっかけは、車いすレーサーの伊藤智也選手とスイスで出会ったことでした。

 伊藤選手は北京パラリンピックで金メダル、ロンドンパラリンピックで銀メダルを獲った方で、僕が出会った当時は現役を引退していたんです。

 わずか10分程度の会話でしたが、僕の中のアンテナのようなものがピピピと反応しまして、生意気にも「伊藤さんってどうしてやめちゃったんですか。東京パラリンピックは選手としてではなく、解説者として出る気ですか、ぜひ一緒にレーサーを開発しましょうよ」と話しかけていました。

星:初対面なのに大胆ですね。

杉原:根拠のない自信のようなものがありまして。(笑)

 それで、日本に帰ってから焼き肉を食べに行って、あらためて意気投合し、東京パラリンピックに向けて一緒にやりましょうということになりました。

星:車いすレースについて、事前にどのくらい知っていたんですか。

杉原:実は、車いすレースはちゃんと見たことがありませんでしたが、RDSは冬季パラリンピックに関わっていたので、パラリンピックについてある程度わかってはいました。

 また、RDSが持っている技術からすると、車いすレースだけに特化したプロジェクトならそれほど難しいことではないと感じていました。

 しかし僕は、プロジェクトを立ち上げる際には常に困難なもの、自分が想像しうる範疇の中で一番難しいものを提案していきたいんです。

星:このプロジェクトにはどのような提案をされたんですか。

杉原:伊藤選手と話し合って、単に金メダルだけが目的ではなく、車いすレースのマシンを開発する過程で培ったテクノロジーや知見を、いかに一般社会にリンクし、社会実装できるか、それを目標にすることにしました。