ジャパネットたかたの佐世保本社内にあるテレビスタジオを会場に、あの聞き覚えのあるメロディにのせてスタートしたジャパネットたかた創業者(現 A and Live代表取締役)・高田明氏のトークイベント「『ザ・ゴール』から学んだこと」。
あたかもテレビショッピングが始まるかのような雰囲気の中、聞き役のゴールドラットジャパン CEO・岸良裕司氏と高田氏のトークテーマは、2021年に日本発刊20周年を迎えた『ザ・ゴール』の魅力と本質、そして高田氏の経営観、人生観の話にまで及んだ。今回の連載では、できるだけ会場の熱気そのままに、ダイジェスト版として当日語られたことのエッセンスをお届けする。
※本記事は2021年11月19日に特別開催された『ザ・ゴール』日本発刊20周年特別トークイベント「『ザ・ゴール』から学んだこと」をもとに作成しています。

ジャパネットたかた創業者・高田明氏が語る「右脳と左脳の化学反応」とはPhoto: Adobe Stock

右脳を働かせて難局を乗り越える

 連載3回目は、トークイベントの中で高田氏が「変化への対応」と「仲間の大切さ」について語った部分を扱っていく。

ジャパネットたかた創業者・高田明氏が語る「右脳と左脳の化学反応」とは

「今の時代、今日売れたものが明日売れる保証はありません。ものすごい速さで世の中が変化しているからです。以前の経営では10年くらいの長期計画を立ててやれていましたが、今は5年計画を立ててスタートしても、1年くらいで全く違う世界になります。

 そこで、大切になるのが(直感力を大事にした)右脳の判断力だと思います。

 たとえば、商品の数をシミュレーションするとき、一般的には、『今年は10万個売れたぞ』となったら、『来年の目標は30万個だよね』と単純に上積みして考えていくのではないでしょうか。

 でも、(論理力と言われる)左脳を一生懸命に使いながら鍛えている人は、結果として右の脳も活性化され、『ここまで伸びてきたけれど、来年は大きな変化が起こるから、もう止めたほうがいい』というような判断ができる。

 だから、これまで左脳を使って一生懸命積み上げてきた人は、左脳と右脳が化学反応を起こして、右脳も鍛えられ、広い視点に立った経営判断ができるようになると思います。

 それが結果として、これから到来する難しい時代も乗り越えていけるのではないでしょうか。

 僕は30年以上、ずっと、目の前のことを一生懸命やってきました。いつもラジオやテレビで商品を紹介してばかりいたので、そのときどきで流行っていた歌も、漫画も、アニメもほとんど知りません。

 7、8年前に、「『乾杯』という新しい歌を歌おうかな」と言ったら、「社長、30年くらい前の歌ですよ」と言われてしまったことがあります。それくらいに僕は集中して働いていたのだなと自分で思うところがあるのです」

人は人に生かされる

 流行歌を口ずさむ暇もないほどに時代を走り抜け、ジャパネットたかたを誰もが知る企業に育て上げた高田氏だが、決して一人で成し遂げたわけではないという。

ジャパネットたかた創業者・高田明氏が語る「右脳と左脳の化学反応」とは

「一生懸命やってきてよかったと思うことの1つは『人は人によって生かされる』ことに気づけた点です。

 僕は41歳までホテルの宴会場で写真を撮っていました。当時は、宴会場で写真を撮って、夜のうちにプリントして翌朝販売にいくということをやっていたのです。長崎県の平戸で5年、佐世保で11年、あわせて16年間写真を撮り続けました。

 あるとき、女房に、『あの頃は、写真を撮って、夜焼いて、朝も売りにいったなあ』と言ったら、『たしかにあなたは頑張っていたよね。でも、夜はお酒を飲んで寝ていることも多かったじゃない。

 写真は夜、私も焼いていたのよ』という答えが返ってきて、そう言われてみればそうだったなと思い直しました。実際、僕もこれまで本当に頑張ってきましたが、副社長をやってくれた女房がいなかったら乗り越えることはできなかったのです。

 仕事というのは協業でもって成り立っています。そのあとも、通販の世界に入って一生懸命働くうちに、仲間が集まってきてくれました。

 同じ価値観を持った仲間が集まって、1つひとつ成果を出しながら世の中を変えていく。仕事というのは、そういうものだと僕は思っています」

うまくいかないことは「失敗」ではない

「僕は73年生きてきましたが、失敗したことは一回もありません。なぜならば失敗というのは、うまくいかなかったことではないと僕は思っているからです。どういうことかと言うと、一生懸命やらなかったことが失敗だという考え方をしているのです。

 もちろん人生の中でうまくいかないことは誰にだってあります。でも、それは失敗ではなく試練だと考えています。たくさんの試練を経験して、その経験を積み上げていって、最終的に自分が目指す姿になっていく、企業であれば、思う通りの企業になっていく。

 実は、詩人のゲーテも『人というのは思ったとおりの自分になる』ということを言っています。僕はゲーテの残したこの言葉を見つけたとき、これは、『今を一生懸命生きる』ことにつながるのではないかと思って、すぐにゲーテが大好きになりましたね。

 だからこそ、僕は、人生というのは、ボトルネックを探す旅であり、『つもり』にならずに、一生懸命やり続けることが大事だと思います」