あ写真はイメージです Photo:PIXTA

新卒で入った会社を辞め、甲社で週3日Webサイト制作の仕事をしているA。社会保険に入りたいと思っていたところへ「週5で働かないか?」と誘いがあり、喜んでフルタイム勤務をすることに。しかし甲社から「あなたは業務委託契約だから社会保険には入れない」と言われ……Aは社会保険に入れるのか?(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
 Webサイトの制作、運営会社。従業員数は20名。
<乙社概要>
 衣料品店を全国チェーンで展開している
<登場人物>
A:25歳。大学卒業後入社した会社を辞め、1年前から週3日は甲社、週2日は乙社でそれぞれフルタイム(両社とも勤務時間は9時から18時まで、休憩時間は1時間)で働いている。
B:甲社社長。40歳。
C:Aの職場の先輩で週3日勤務。
D:Bの大学時代の友人で社労士。甲社から徒歩5分の場所に事務所を構えており、B社長とはよく一緒にランチをしている。

甲社で週3日、乙社で週2日働いていたが……

 Aは甲社でWebサイトの制作、メンテナンス業務を担当し、B社長や他の社員から詳細な指示を受けながら仕事を行っている。学生時代、自らが所属していたサークルやバイト先のWebサイト、ブログを作成していたことがあり、今の仕事はその時の経験が生かせる。給料は時給制だが、1日8時間勤務で1万6000円+通勤費ももらえるため、その点は満足していた。

 一人暮らしのAは乙社が経営する衣料品店でも働いたが、これはあくまでも生活費を補てんするため。本心は甲社で週5日フルタイムで働き、将来のことを考えて会社の社会保険に加入したかった。

「おはようございます」

 3月下旬。Aの声を聞いたB社長は、事務所の奥にある応接室から顔を出してAを手招きすると、いきなりこう言った。

「実は君と一緒にWebサイト制作を担当しているCさんが、3月末で会社を辞めることになった。よかったら4月から、週5日フルタイムで働かないか?」
「本当ですか?」

 Aにとっては願ってもないことだったので、二つ返事で承知した。B社長は「じゃあ、4月からの契約書を作って明日渡すから。これからもよろしくね」とすれ違いざまにAの肩をポンとたたき、部屋を後にした。Aは思わずガッツポーズした。「やった!これで社会保険に入れる。安泰だ!」。