「社内プレゼン」は、ビジネスパーソンにとって必須のスキルです。どんなによいアイデアがあっても、組織的な「GOサイン」を得なければ一歩も前に進めることができません。そのためには、説得力のあるプレゼンによって決裁者を説得する技術が不可欠なのです。
そこで役立つのが、ソフトバンク在籍時に孫正義氏から「一発OK」を何度も勝ち取り、独立後、1000社を超える企業で採用された前田鎌利氏の著書『完全版 社内プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)です。
本書では、孫正義氏をはじめ超一流の経営者を相手に培ってきた「プレゼン資料」の作成ノウハウを、スライド実例を豊富に掲載しながら手取り足取り教えてくれます。読者からは「大事なプレゼンでOKを勝ち取ることができた」「プレゼンに対する苦手意識を克服できた」「効果的なプレゼン資料を短時間で作れるようになった」といった声が多数寄せられています。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、わかりやすいプレゼンをするために、本編スライドを「5~9枚」に絞り込む必要性について解説します。

社内プレゼン資料を<br />「5~9枚」に絞り込むべき明確な理由写真はイメージです。Photo: Adobe Stock

社内プレゼンは「3分」で終わらせる

 社内プレゼンをするうえで最も大切なことは、「決裁者の立場」に立って考えることです。

 提案内容を、彼らが理解しやすく、納得できるように伝えるためには、どうすればいいか? それを、徹底的に考えることが「一発OK」を勝ち取る大原則なのです。

 では、決裁者にとって最も迷惑なことは何でしょうか?

 ムダに時間を奪われることです。決裁者はとにかく忙しい。しかも、限られた会議時間のなかで次々と意思決定をしなければなりません。だから、彼らは、ダラダラと要領を得ないプレゼンを最も嫌うのです。

 そのため、社内プレゼンは3分で終わらせるのが基本。長くても5分以内で終わらせます。どんな案件でも、3~5分あれば、提案の骨子を説得力をもって伝えることは可能です。むしろ、その時間内に収められないのは、提案のポイントが十分に整理できていない証拠だと考えるべきです。

「3分」+「10分」+「2分」

 もちろん、その「3分プレゼン」だけで意思決定ができるわけではありません。

 下図のように、「3分プレゼン」ののちに、そのプレゼン内容に関するディスカッション(質疑応答)を「10分以内」で行なったうえで、「2分以内」に意思決定を行う。つまり、「15分以内」で意思決定することを基本とするとよいでしょう。

社内プレゼン資料を<br />「5~9枚」に絞り込むべき明確な理由

 なお、プレゼンは1~2分でもOK。プレゼンは「簡にして要」が鉄則。3分以内でその条件を満たすならば、短いほうがよいのです。ディスカッションも同様で、提案内容に対して特段の疑問点などがなければ、即座に意思決定ができますから「1分」で終わることもあるでしょう。

 大事なのは、ディスカッションの「質」ですから、必ずしも短いことに意味があるわけではありません。しかし、「10分」以上かけても意思決定できないのは、そもそもプレゼン内容に不足があるからだと考えるべきです。その場合には、「やり直し」とするのが正解でしょう。

「3分プレゼン」を実現するシンプルな方法

 では、「3分プレゼン」を実現するためには、どうすればいいのでしょうか?

 簡単です。

 プレゼン資料のスライド数を絞り込むことです。

 プレゼンは、資料に沿って進めるものです。いわば、資料はプレゼンのシナリオ。このシナリオの分量が多ければ、自然とプレゼンは長くなってしまいます。逆に、簡潔なシナリオをつくれば、それだけで確実にプレゼンは短くなるのです。だから、プレゼン資料は「5~9枚」でまとめるようにしなければなりません(下図参照)。

社内プレゼン資料を<br />「5~9枚」に絞り込むべき明確な理由

 この「5~9枚」には、表紙やサマリー、ブリッジ・スライドは含みません。本編スライドだけで5~9枚に収めればOK。この制約を意識して、伝える内容を絞り込めば、必ず3~5分でプレゼンを終えることができます。

「5~9枚」を超えると、よくわからないプレゼンになる

 スライドを5~9枚にまとめることには、さらに重要な意味があります。5~9枚を超えると、とたんによくわからないプレゼンになるのです。

 この法則は、アメリカの認知心理学者であるジョージ・ミラーが提唱した「マジカル・ナンバー」に基づくものです。ミラーは、人間が瞬間的に記憶できる情報量の限界は「7±2」であることを発見。この「7±2」をマジカル・ナンバーと名づけたのです。例えば、電話番号は「○○○‐○○○‐○○○○」と区切って表記されますが、それは「○○○○○○○○○○」と表記すると数字を把握できないからです。ハイフンによって、1つの情報の塊を「7±2」に収まるようにしているのです。これもマジカル・ナンバーの活用例と言えるでしょう。

 社内プレゼンも同じです。スライドの数が「7±2」を超えると、決裁者はプレゼンの内容を理解することが難しくなります。だから、スライドは5~9枚でまとめるようにしてください。それが、社内プレゼンの基本中の基本なのです。

(本稿は、『完全版 社内プレゼンの資料作成術』より一部を抜粋・編集したものです)