ハーバードを辞退し進学するほど人気?「ミネルバ大学」に現役東大生が入学し直すワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

海外の大学に進学する選択肢が増えている。そんななか近年注目を集めるのが、“世界のエリートが今一番入りたい大学”ともいわれるミネルバ大学だ。世界屈指のエリート校として名高いハーバード大学やスタンフォード大学の入学を辞退してまで進学する人もいるほどの人気ぶりだという。2014年に開校した新しい大学で、まだ日本人の卒業生や在校生はわずかしかいない。東京大学2年生の煙山拓さんは、21年12月にミネルバ大学の合格が決まった。そして22年8月から入学する予定だ。彼が東大を離れる決心をしてまで進学を決めたミネルバ大学とは、いったいどのような大学なのだろうか。(フリーライター 中村洋太)

 人気テレビ番組「世界一受けたい授業」でも取り上げられるなど、徐々に認知度が高まってきているミネルバ大学だが、まだまだ知らない日本人も多い。まずはこの大学のユニークな特徴を紹介しよう。

校舎がなく
4年間で世界7都市を巡る寮生活

 ミネルバ大学には、物理的なキャンパスが存在しない。アメリカの大学らしい、学生のための広大な敷地や、豪華な校舎がない。代わりにあるのは、「都市をキャンパスにする」という方針だ。学生たちは4年間で世界7都市に滞在し、異文化に浸かりながら寮生活を送るのだ。

 まず1年目の前期をサンフランシスコで過ごす。その後は半期ごとにソウル、ハイデラバード(インド)、ベルリン、ブエノスアイレス、ロンドン、台北と場所を変え、最後は再びサンフランシスコに戻ってくる。都市を回る順番は世界情勢などによっても変わり、場合によっては訪問都市自体が変更されることもある。

 ちなみに設立当初は初めの1年間をサンフランシスコ滞在としていたが、学生からのリクエストもあり、現在は「1年目の前期と4年目の後期に半年ずつ」と変わったそうだ。このように、柔軟にアップデートを図っていることもミネルバ大学の特徴かもしれない。

 この7都市のセレクトは、安全性、費用面、プロジェクト学習の提供機会、滞在ビザの問題、文化的な学びなど、様々な観点から考え抜かれている。学生たちはただ街で過ごすのではなく、地元の企業・NPO・行政などの外部団体(=市民パートナー)と連携して行われるプロジェクトに参加し、授業で学んだことを実社会の中で実践していく。これらの経験学習は、毎週10個程度の選択肢が用意されていて、何に参加するかは学生がそれぞれの興味関心や強み・弱みに合わせて主体的に決められる。このような取り組みが、ほかの大学にはないポイントだ。

 そんな同校には現役東大生をも魅了した、「ここでしか体験できない魅力」がある。