習近平がEU首脳に語った「ウクライナ危機」4つの解決策4月1日に開催された中国・EU首脳会議の様子 Photo:Anadolu Agency/gettyimages

ウクライナ侵攻からまもなく6週間
「ロシア寄りの中立」を維持する中国

 ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して6週間がたとうとしているが、依然として「出口」は見えてこない。4月2日、ウクライナ政府は首都キーウ周辺地域を奪還したと発表したが、ロシア軍撤収後の地域からは民間人とみられる多数の遺体が確認されている。ロシア軍の包囲が続く南東部マリウポリでは、「人道回廊」を経由した住民の脱出が難航している。

 ロシアとウクライナの間では停戦協議が続き、一定の進展を見せているようにもみえるが、「終戦」にこぎつけるためには、両国が納得する形で合意に至らなければならない。特に重要なのは、両国がそれぞれ「自国は安全だ」という確信を持てる枠組みを、合意の上で構築できるか否かであろう。

 その過程で、ウクライナはロシアのクリミアへの主権を認めるのか。ウクライナはNATO(北大西洋条約機構)やEU(欧州連合)への非加盟、非武装化、中立化をロシアに約束するのか。筆者には、両国の間にはまだまだ溝が存在すると同時に、両国がそれぞれに求める安全保障そのものが水と油の関係に思えてならない。

 当事者以外のステークホルダーたちも事態の収束のために行動はしている。3月下旬、NATO、EU、G7(先進7カ国)がブリュッセルで立て続けに首脳会議を開催し、ロシアに対する制裁を最大限に高めるべく「西側」の結束を強調した。

 一方、この期間、ロシアのラブロフ外相が中国とインドを相次いで訪問し、安徽省で王毅国務委員兼外相(3月30日)、ニューデリーでジャイシャンカル外相(4月1日)と会談。中印はロシア非難の国連決議でも棄権票を投じてきた。ロシアが西側の経済・金融制裁に見舞われる中でも、中印は軍事、経済、エネルギー、金融といった分野での「連携」を続けている。例えば、ラブロフ外相は印ロ外相会談後の記者会見で、両国がルーブル・ルピーによる貿易決済メカニズムをすでに実施しており、今後より一層このシステムを強化していくと宣言した、と中国の国営新華社通信が報じている(4月1日、胡暁明記者、ニューデリー)

 ロシアは引き続き中国とインドという地域の大国と軍事、経済、金融、エネルギーといった分野での連携を確保するために奔走するだろう。ロシアはこれまで中国とインドに兵器の売却を含め多くの軍事支援をしてきた経緯がある。

 昨今の情勢下では、原油や天然ガスを破格の値段で売り付け、中印もまたそれを受け入れるとみられる。その過程で、米ホワイトハウス関係者が筆者に語ったように、ウクライナ危機対処への姿勢として、中国は「ロシア寄りの中立」を、インドは「中立」を維持することで、ロシアの一層の孤立が引き起こすより不確実な未来に備えるだろう。それと同時に、西側主導の国際関係における戦略的自主を誇示し、国益と対外影響力の保持に努めようとするに違いない。