混迷ウクライナ#25Photo:Universal Images Group/gettyimages

ロシアのウクライナ軍事侵攻や対ロ経済制裁でエネルギー価格が急騰、原油価格はリーマンショック以降の最高値を一気に更新した。米国が原油備蓄放出を打ち出す一方で、ロシアは欧州にガスの供給停止をにおわせながらルーブル払いを求めるなどの綱引きが続く。ウクライナ危機は国益確保や国際政治のパワーバランスにおける資源の重要性を改めて浮き彫りにした。エネルギーの輸入依存度が高い日本は、この事態にどう対応するのか。特集『混迷ウクライナ』の♯25では、エネルギー安全保障の課題を日本エネルギー経済研究所専務理事の小山堅首席研究員に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)

エネルギー危機「三つのシナリオ」
ロシアの供給が止まれば「供給不足」に

――ウクライナ侵攻に対するロシアへの制裁やその報復の懸念から、エネルギー価格が急騰しています。コロナ禍からの回復途上の世界経済に再び暗雲が漂い始めました。今の事態をどう捉えていますか。

 ウクライナ危機が起きる前の2021年秋以降、コロナ禍からの経済の急回復に伴いエネルギー価格は上昇を続けてきました。コロナ禍での需要の落ち込みが大きく、まさに“谷深ければ山高し”の状況でした。そこにウクライナ危機が加わって、一気に価格上昇が加速しています。

 しかも石油だけでなく、ガスや石炭、電力など全てのエネルギー源で同時多発的に価格が上昇する、かつてない異常な事態です。

 今後、どうなるのか。三つのシナリオが考えられます。