自分への期待値が低い人ほど、長期的に成功できる理由

3月に『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』を出版した株式会社じげん代表取締役社長の平尾丈氏。25歳で社長、30歳でマザーズ上場、35歳で東証一部へ上場し、創業以来12期連続で増収増益を達成した気鋭の起業家だ。
そんな平尾氏が「若手起業家で最高の別解力」と絶賛するのがBASE代表取締役CEOの鶴岡裕太氏。大学在学中だった2012年に個人やスモールチームがネットショップを作成できるサービス「BASE(ベイス)」をリリース。わずか1ヵ月で1万店舗が加盟した。起業後も順調に拡大を続け、鶴岡氏が30歳になる直前の2019年10月に東証マザーズへの上場を達成。現在は170万以上のショップが利用し、ネットショップ開設実績5年連続No.1を獲得している。
不確実性が高く、前例や正攻法に頼れない時代。そのなかで圧倒的な成果を出しているおふたりに「起業家の思考法」について語っていただいた。
連載第3回は、鶴岡氏の考える起業家の仕事の本質を教えてもらった。「自分らしさ」に悩む人への具体的なアドバイスも参考になった。
(写真 株式会社じげん・津田咲 構成 林拓馬)

起業家の仕事は未来の世の中を信じること

――前回に続き、別解を実現する「実現力」についてお話しを聞かせてください。

鶴岡裕太(以下、鶴岡) 海外も含めて長期でやるというのが、実現力の上では大事だなと思いました。「根拠のない自信が大切だ」と本の中にも書いてありましたけれど、すごく難しいじゃないですか。それを5年、10年できるのが起業家のすごいところだなと思います。

平尾丈(以下、平尾) 鶴岡さんは、相当自信があったのではと外から見ていました。

鶴岡 いやいや。最初は相当メンタルやられましたよ。叩かれたので。

当時は個人がネットショップをつくるなんてありえないし、モールもないのに物が売れるなんてありえなかったんですよ。でも、やっぱり若い人たちだったらわかる感覚があるじゃないですか。「SNSでこんなに情報が流通している」とか、「Amazonや楽天にはない情報が、Instagramにはある」とか。

ずっとそれを信じ続けるのは、大企業にはできないんですよね。BASEなんていまだに赤字なので。10年間赤字を許容できるのは、スタートアップの強みかなと思います。それをロングタームでやっているから、支援者がいて投資をしてくれる。

長いスコープでチャレンジするからこそ、支援者が来てくれて実現できる構造かなと思ってます。

やっぱり起業家はビジョンとかミッションをつくる仕事だと思うんです。投資家はそれを助けてくれる人たち。だから、ショートタームすぎると投資家にも支持してもらえない。

「世の中がどうなっていくか」、「どんな未来を我々は信じますか」など、長いスパンでどういう世の中を信じるかが、特定のものを実現していくためには大事だと思うんですね。

たとえばGoogleとかAmazonとかって、インターネットの可能性を一番信じた人たちがつくったと思うんですよ。「インターネットで本なんて売れるわけない」とか絶対言われたと思います。でもインターネットを楽観的にシンプルに信じられた。

だから、あのタイミングで投資ができて、いまのような時代になると一気に回収できると思うんですよね。

BASEは、インターネットのポテンシャルもそうですし、ロングテールの可能性を信じています。大企業じゃなくて、個人とかスモールチームがどんどん強くなるし、「彼らが強くなる=世の中が豊かになる」ことを一番信じることができた会社が、このロングテールマーケットで勝つと思うんです。

超定性的なんですが、これが定量に反映される時がくる。強く信じれば信じるほど、足元の投資額とか投資家への説明への強さにも表れます。

僕はその可能性を世界中で一番強く信じてきました。それがこの10年やってきた仕事かなと思うんです。実現力の源泉もここにある気はしています。

自分への期待値が低い人ほど、長期的に成功できる理由鶴岡裕太(つるおか・ゆうた)
BASE株式会社 代表取締役CEO
1989年生まれ。大学在学中から複数のインターネットサービスのバックエンドのプログラミングやディレクションを経験し、2012年12月に22歳でBASE株式会社を設立。「Payment to the People, Power to the People.」をミッションに、決済の簡易化を主軸にした事業を展開し、国内最大級のネットショップ作成サービス「BASE(ベイス)」等を運営。2018年にForbes JAPANの日本の起業家BEST3位に選出。2019年10月に東証マザーズに上場。