コロナ禍のリモートワークなど生活スタイルの変化により注目されたのが、資産形成に対する関心が高まったこと。特に、20~30代の若い人たちの間で、つみたてNISAの口座開設が急増した。そんな状況の中、つみたてNISA本の決定版ともいえる『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)が3月16日に発売。本連載では、つみたてNISAを利用して長期投資や資産形成をしてみたいという人に向けて、失敗しないつみたてNISAの賢い選び方・買い方について、同書から抜粋して公開する。「つみたてNISAってなに?」という投資ビギナーの人でも大丈夫。基本的なところからわかりやすくお伝えしていくので、ぜひ、お付き合いください。好評のバックナンバーはこちらからどうぞ。

なぜ、日本人は「短期、一括、集中」という投資が好きなのか?Photo: Adobe Stock

投資信託の平均保有期間は、3.8年

 最近、ちょっとした「ガッカリ」がありました。

 本来、投資信託という金融商品は株式やFXのように、短期間で売買を繰り返すようなものではありません。長く、じっくり保有することによって、高いリターンを得られる可能性が高まるという性質を持っています。つまり「長期投資」という視点で、投資信託を保有してほしい、ということです。

 そのことは、以前に出版した『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)の中でも、私が日本全国で行っているセミナーでも、大勢の方たちに伝えてきたつもりでした。特に、私がダイヤモンド社で出版した本は累計で10万部以上売れており、私が言いたいことは、それなりに世の中に伝わってきたと思っていました。

 しかし、現実は厳しかったのです。

 投資信託を買った個人が、その投資信託をどの程度の期間、保有しているのかを示した数字があります。この投資信託の平均保有期間(主要行等)は2014年度時点では2.3年でした。

 しかし、その後、販売金融機関が短期乗り換えを勧めなくなったこともあり、2015年度時点が3.1年、2016年度は3.0年、そして2019年には4.2年まで改善しました。4年を長期というのかといえば、決してそうではないのですが、一応、投資信託を長く持つという気運は、徐々に高まったかのように見えました。

 ところが2020年度の平均保有期間を見ると、3.8年まで短くなってしまいました(図参照)。

 投資信託の長期保有が定着するには、まだまだ時間がかかるかも知れません。私は、投資信託の平均保有期間は最低でも10年を目指したいと考えています。

 かつて、銀行や証券会社などの販売金融機関は手数料を稼ぎたいがために、投資信託を購入した人に半年かそこらの短期間で解約してもらい、他の投資信託に乗り換えさせるという、非常にマナーの悪い販売を行っていました。

 儲かった場合には、「もっといい投資信託がある」、損をしている顧客には「違う投信を購入して、損を取り返しましょう」というような営業トークで、投資信託を売っていたのです。

 これに異議を申し立てたのが金融庁でした。彼らはデータを提示したうえで、これまで投資信託の販売現場で横行していた短期回転売買を強く批判したのです。

 金融機関は金融庁に睨まれたくありませんから、それ以来、投資信託の平均保有期間をできるだけ延ばすため、販売現場に対しては、「最低でも3年は解約させないように」などと厳命を下していました。

 そうであるにもかかわらず、投資信託の平均保有期間が再び短期化したのは、その原因が販売金融機関の側だけにあるのではなく、投資家の側にもあるのではないか、という推測が成り立ちます。