クリミア共和国はなぜ消えた?教科書には決して載らない国々の存亡の歴史著者は「驚くほど小さな国が誕生することもあれば、小国が巨大な帝国に取り込まれることもある。おそらく、こうした動きはこれからも続くだろう」と指摘する(写真はイメージです) Photo:PIXTA

おすすめポイント

 世界史をひも解くと、実に多種多様な国々が生まれ、消えていったことが分かる。国境を接する他国と戦火を交えたり、併呑されたり、自ら消滅の道を歩んだりとさまざまな事由があり、それぞれに人間のドラマがある。世界に限らず、日本史を振り返るだけでも、その時代時代を生きた武将やリーダー、人々の生きざまや生活に思いを馳せることができる。

『世界滅亡国家史』書影『世界滅亡国家史』  ギデオン・デフォー著  杉田真訳 サンマーク出版刊 1650円(税込)

 しかし、さらに目を凝らしてみると、教科書には決して載らないような国々の存亡の歴史があるのだと本書『世界滅亡国家史』は教えてくれる。オックスフォード大学で考古学と人類学を学んだ著者が厳選した、「地図から消えた国々の記事集」だ。

 植民地支配と被支配の関係性、あるいは二度の世界大戦の中で翻弄された人々の苦境を背景とした、国家の樹立と滅亡の歴史が端的に48紹介されている。

 その「滅亡」のパターンごとに「嘘と失われた王国:国家は意外と「虚言」で始まり、終わる」(第3部)など全4部で構成される。要約では各部から数カ国ずつピックアップした。

 遠い昔の歴史の話ばかりでなく、クリミアなど極めて今日的な地域も扱っている。時代背景や地理的条件が異なるため、単純に類型化や比較はできないが、複雑できな臭い現代の国際情勢を読み解くうえできっと参考になるだろう。(南 龍太)