ロシア侵攻で「ある金融商品」に投資した日本の富裕層が続々打撃を受けた事情Photo:PIXTA

ロシアのウクライナ侵攻が、世界経済に大きな影響を及ぼしています。多額の資産を持つ富裕層にとってもそれは他人事ではありませんでした。特に打撃を受けたのが、「仕組債」に投資していた人々です。どんな変化が生じたのか。仕組債のメカニズムを踏まえて解説します。(アレース・ファミリーオフィス代表取締役 江幡吉昭)

ロシアのウクライナ侵攻が
富裕層の資産運用に与えた打撃

 欧米発のインフレの渦中に起きた、ロシアのウクライナ侵攻。30年ぶりの世界秩序の転換点となりそうな様相を呈しています。情勢悪化を受け、株や為替、商品も大きく動きましたが、富裕層の資産運用にはどんな変化があったのでしょうか。

 ロシアのウクライナ侵攻は、富裕層の資産運用に打撃を与えたのか。その答えはYESです。特に大きな変化として、富裕層が数多く投資する「仕組債」という独特の商品が続々と「ノックイン」していることが挙げられます。「仕組債」「ノックイン」という言葉が耳慣れない人も多いと思うので説明しましょう。

 仕組債とは、デリバティブを内包した債券のことです。債券というと、低リスク低リターンのイメージがあるかもしれませんが、さにあらず。仕組債は、「高リスク・ミドルリターン」で、どちらかというと投資家にとっては分が悪い金融商品といえるのです。

 例えば、多くの仕組債が、テスラやエヌビディアなどのハイパーグロースの米国株を組み入れており、これらの株が運用期間中(だいたい1~5年)にある一定レベルまで株価が下落しなければ「クーポン」と呼ばれる利息が10~40%程度支払われます。「40%なんて高利息!」とも言われそうですが、リスクは当然あります。

 具体的に最近よくある仕組債を見ていきましょう。