米国の次期景気後退入りは2024年が濃厚、住宅バブル崩壊再来は杞憂か今回は住宅ブーム終焉程度にとどまるか? Photo:AP/AFLO

 米国の短期と長期の金利格差(長短金利格差)がフラット、ないしは逆転する(長期金利の方が短期金利より低くなる)兆候があり、これが近い将来に米国が景気後退に入るシグナルだという論調が日米の経済系メディアなどで最近よく目につく。

 リーマンショック前にそのような長短金利格差が逆転したのは2006年だ。2006年は高騰を続けていた米国の住宅価格(S&P/Case-Shiller指数)が当時の高値を付けた年でもある。そして2007年には住宅バブルがはじけ、2008年には金融危機と深刻な不況になった。

 今回も米国の住宅市場では、同指数が前年同期比で19%(2021年第4四半期)と高騰している。この上昇率は2005年の14.2%、2006年の7%をもしのぐものだ。「住宅バブル再来か?」という声も出始めている。果たして米国経済は2023年に再びバブル崩壊型の景気後退に入るのだろうか。今回はこの点を考えてみよう。

 結論から言うと、今後の米連邦準備理事会(FRB)の金利引き上げで住宅価格の伸びが鈍化、場合によっては住宅価格指数が前年比マイナスになる可能性もありそうだ。ただしそれは戦後に何度も起こった「住宅ブームの終焉」的なものにとどまり、2007~08年のようなバブル崩壊・金融危機的なケースになる可能性は乏しい。

 また景気後退への移行も2023年中よりも2024年以降になる可能性が高そうだ。ただしこの点について断定的な判断を下すのは現時点では時期尚早だろう。

景気後退の予兆としての長短金利格差の逆転

 米国の長短金利の逆転が近い将来の景気後退のシグナルになることは、100%ではないが過去のパターンを見る限り蓋然性が高い。筆者自身も直近では2019年7月の論考『米国の次期景気後退入りは2020年、最大4割の株価下落に要警戒』(2019年7月19日掲載)などで景気後退を予兆するシグナルの1つとして挙げている。

 まず一般論として、長期金利は短期金利より高いのが通常であるが、時々長短金利差の逆転が生じる。なぜこの長短金利格差の逆転が近い将来の景気後退のシグナルになるかというと、それが債券投資家と資金調達者(企業)の将来予測的な投資行動を反映するからだ。