「コミュニケーションスキルはあくまで結果にすぎない」「コミュニケーションスキルはあくまで結果にすぎない」 Photo:Weekend Images Inc./gettyimages

日本初のサインレス決済やポイントに有効期限のない「永久不滅ポイント」など、イノベーティブな発想と戦略でクレディセゾンを成長させ、2002年にクレジットカード業界のトップへと押し上げたクレディセゾン会長CEOの林野宏さん。毎日のようにスタートアップと面会するなど、そのビジネス感度を常にアップデートし続ける林野さんへの今回の質問は、「ビジネスパーソンに今、まさに必要なスキルとは?」です。果たして林野さんの答えは?(聞き手/ダイヤモンド社編集委員 長谷川幸光、構成/奥田由意)

クレディセゾン会長が語る「今まさに必要な2つの根本的なスキル」Illustration by Wu-tang

スキルに関する客観的評価が
可視化される時代

――変化の時代、「リスキリング」や「学び直し」がよく話題にのぼっています。林野さんは、ビジネスパーソンに今、必要なスキルとは何だと思いますか?

 私は2つのスキルが必要だと思います。

 まずは今、必要なスキルとのことで、「今」とはどのような時代なのかを、あらためて考えてみましょう。

 現在の中高年のビジネスパーソンが若い頃は、「新卒一括採用」「年功序列」「終身雇用」が当たり前でした。一度、企業に就職したら、その会社にい続けさえすれば、ある程度の給与水準が保証され、定年まで安泰でいられました。途中で辞めると退職金がカットされるなど損をするしくみだったので、皆、ひとつの企業にしがみつきました。

 それが変化して、2012〜2015年頃からでしょうか。「これからどんどん社会が変わる」「DXをやらないとだめだ」「ダイバーシティ&インクルージョンを推進しよう」と言われるようになりました。これが徐々に浸透し、今働く人は、「勉強し続けなければ時代に取り残されてしまうのではないか」「このままでは自分の給与が上がらないのではないか」という不安を持ち始めています。

 さらに、それまでは会社に入ってからスキルを身につけるケースが一般的でしたが、今は、ジョブ型ともいわれるように、まずはスキルを身につけ、そのスキルに対して仕事が与えられるような社会になってきています。このような時代は、私が社会に出てから初めてのことです。

クレディセゾン会長が語る「今まさに必要な2つの根本的なスキル」林野宏(りんの・ひろし)
クレディセゾン代表取締役会長CEO。1965年埼玉大学文理学部卒業後、西武百貨店(現そごう・西武)入社。1982年に西武クレジット(現クレディセゾン)へ転籍し、クレジット本部営業企画部長、常務、専務を経て、2000年に代表取締役社長に就任。日本初のサインレス決済やクレジットカードの即発行・即利用、ポイントに有効期限のない「永久不滅ポイント」など、イノベーティブな発想と戦略でクレディセゾンを成長させ、2002年にクレジットカード業界のトップへと押し上げる。2019年に会長CEO。著書に、『BQ 次代を生き抜く新しい能力』(プレジデント社)、『勝つ人の考え方 負ける人の考え方』(かんき出版)など。

 昔は、会社の言われるがままに働いていればよかった。自分が何を学べばいいのか、自分の市場の価値はどのくらいかなんて、考える必要もなかった。でも今は、それを知るための客観的な情報が出そろっていて、自分は何を学べばいいのか、自分の市場価値はどのくらいかが、鮮明になってきています。

 私は社員たちに、転職サイトに登録してみて、自分の市場価値を測ってもらえと言っています。ある役員が登録してみて、希望年収を3000万円と設定したところ、担当者に「TOEICは何点ですか?」と聞かれたそうです。その役員はTOEICなんて受けたことがありませんでした(笑)。このように、スキルに関する客観的評価が可視化されるようになってきたんですね。

 細目はいろいろあるでしょうが、データ解析などデジタルに関するスキルや、英語のスキルはもちろん大切です。昔は学校へ通い、高い授業料を払わなければこれらのスキルを習得することはできませんでしたが、今はやる気さえあれば、YouTubeやZoomなどを使って、30分1000円くらいで、英語ネイティブの人と英会話ができてしまう。デジタルのスキルも、今は動画で学べるものがたくさんあります。

 自分で必要なものを手っとり早く学べるような環境が整ってきています。学び方がかつてと根本的に変わっているんですね。これらについては今日からでも学び始められるのですから、やらない手はないでしょう。

 このように、今は、仕事に必要な具体的なスキルが客観的に評価され、定義される時代です。何を学ぶべきかが自分でわかり、かつ、そのスキルの磨き方や習得方法にも容易にアクセスできる。これは今の時代特有のことだと思います。

 もちろん、前述のデジタルや英語のスキルは重要です。でもそれ以外に、今の時代、私は2つの「根本的なスキル」が必要だと思っています。