オールド・エコノミーの代表選手のような三菱重工では、2003年に就任した佃和夫社長(現会長)の時代から構造改革が続く。その後を受けて08年に登板した大宮英明社長は、“自前主義の権化”だった組織の荒療治に精を出す。最近の動きと併せて、問題意識を直撃した。

“国境を越えるM&A”も<br />臆することなく挑戦する<br />大宮英明・三菱重工業社長インタビューおおみや・ひであき
1946年、長野県生まれ。69年、東京大学工学部を卒業後、三菱重工業に入社。名古屋航空機製作所に配属され、主に防衛畑を歩む。名古屋航空宇宙システム製作所副所長、冷熱事業本部副本部長などを歴任。常務、副社長(ものづくり革新推進担当)を経て、2008年に社長に就任。気分転換は、英国のスパイ小説家フレデリック・フォーサイスの作品を原書で読むこと。
Photo by Shinichi Yokoyama

──先の総選挙で、民主党が惨敗し、自民党の安倍晋三新政権が発足した。「2030年代に原発稼働ゼロ」という公約を掲げた民主党と異なり、「経済成長」を打ち出す自民党のほうが重厚長大産業にとっては、きちんと話ができるし、“追い風”になるのではないか。

 非常に期待している。

 産業界にとって、真っ先に経済成長を挙げてくれるということはありがたいことだ。

 近年、日本の産業界はいわゆる「6重苦」(温暖化ガス規制、高い法人税、厳しい労働規制、貿易自由化の遅れ、超円高、電力コストの高騰)に苦しめられてきた。

 私がいちばん望んでいることは、「政策を決めて、そして実行してほしい」ということだ。現実的には、長期政権で腰を据えて取り組まないと、何かを成し遂げることはできないのではないか。

 もちろん、民主党の野田佳彦代表は、消費税増税法案を成立させるなど、大きな決断をした。

 だが、残念ながら、野党6党から内閣不信任決議案が提出されるなど、混乱も招いた。政局の運営を考えれば、そのような中で何かを次々と決めていくというのは難しかったのだと思う。4~5年は必要だったのではないか。会社の社長だって、1~2年で代わるのであれば、よい仕事はできない。