食料争奪戦#4Photo by Kazutoshi Sumitomo

経済停滞で値上げが進まない市場環境に加えて、足元の円安が直撃する外食産業。国内での事業リスクが高まる中、海外展開の加速が急務になっている。「丸亀製麺」などを運営するトリドールホールディングスは、海外事業を成功させている数少ない外食企業だ。なぜ、同社は海外市場を目指すのか。また、厳しい市場環境にある国内事業をどのように成長させるのか。特集『食料争奪戦 日本の食卓が危ない』の#4では、粟田貴也社長兼CEO(最高経営責任者)に、その戦略を聞いた。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

強気の海外4000店計画をぶち上げ
背景に国内事業リスク

――外食企業にとって海外展開は、これまで成功事例が少ない「鬼門」と呼べるものです。しかし、足元の円安や値上げが受け入れられづらい国内の環境を考えると、これまでのように国内だけで事業を完結させることのリスクが顕在化しているように感じます。

 おっしゃる通りだと私も思います。日本の外食産業は1980~90年に飛躍的に成長して世界トップクラスの外食大国にまでなりましたが、実は市場は97年からピークアウトしています。この先を考えても、少子高齢化で需要も減り、労働集約型の外食産業を支える労働人口も減るなど厳しい環境にあります。

 一方、海外は日本市場のシュリンクに反して、地域によっては今後10年で市場が20~50%成長するという予測もあります。日本でナショナルチェーンが数多く誕生した80年代、90年代の姿が、海外にあるということです。

 そう考えると、もう明らかに国内だけじゃなくて海外に目を向けた方がいいわけです。

 当社は2028年3月期までの中期経営計画で、全世界で5500店の出店を掲げています。そのうち海外が4000店。いまはまだ海外店舗は600店程度で国内の構成比の方が高いですが、肥沃な海外市場に打って出ることで、これを一気に逆転させるつもりです。

――海外4000店は非常に高い目標です。海外展開に向けた具体策は。