社外取「欺瞞のバブル」9400人の全序列#14Photo by Yoshihisa Wada

社外取締役の役割について、投資先企業のガバナンス動向が収益に直結する海外アクティビスト(物言う株主)はどう考えているのか。特集『社外取「欺瞞のバブル」9400人の全序列』の#14では、陰に陽に日本企業への積極投資を続ける香港拠点の投資ファンド、オアシス・マネジメント創設者で最高投資責任者(CIO)を務めるセス・フィッシャー氏を直撃。同氏は日立やソニー、キリン、マネックスなどの企業の名を挙げながら、日本企業のガバナンスを巡る率直な評価を明らかにした。その上で、優良ガバナンス企業の共通点や、社外取が果たすべき役割、さらに日本企業に求めるものとは何かまでを語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

「今こそ再び対話の時」
20社と活発にやりとり

――約2年前の株主総会シーズンでは「コロナ危機を乗り切ることに注力してほしい」として、強硬な株主提案を控える方針を示していました。今年はどのような姿勢で臨むつもりですか。

 コロナ禍は大局的に見ると、ほとんど終わったと言ってもよいでしょう。東京に滞在中の数週間、以前と同様1日3回は企業の経営陣と面談の機会を持っています。今こそ、われわれも株主として、再びエンゲージメント(対話)を行う時です。実際、今年は企業に対して個別に深く関与してきました。

ケン・フィッシャーSeth Fischer/1993年に米エシバ大学を卒業後、イスラエル国防軍に勤務。95年に米ヘッジファンドのハイブリッジ・キャピタル・マネジメントに入社し、アジアの投資ポートフォリオ運用を担当。2002年に香港でオアシス・マネジメントを設立。これまで任天堂、京セラ、パナホーム(現パナソニック ホームズ)、アルパイン(現アルプスアルパイン)、三陽商会、パソナグループ、GMOインターネット、出光興産、東芝、マネックスグループなどへ投資実績がある。Photo by Y.W.

(エレベーター大手の)フジテックに対しては、公開キャンペーンを展開中です。創業家(内山家)とフジテックの関連当事者取引は非常に不適切で、多くの内部告発者がいます。株主総会(6月23日開催)では、株主に内山高一社長の選任へ反対票を投じるよう呼びかけているところです。

――直近では、どれほどの数の日本企業にエンゲージメント活動を行っていますか。

 私たちは日本株に何十億ドルも投資してきました。現在は特に20社と活発にやりとりしていますが、他にも多くの日本企業に関与しています。中には、時間をかけて取り組んでいる例もあれば、エンゲージメントが始まったばかりの企業もあります(編集部注:保有比率が発行済み株式数の5%を超える投資先企業は、6月上旬時点でフジテック、マネックスグループ、ダイビル、北越コーポレーション、デジタルガレージなど)

――投資先の選定時に、重視するポイントとは。

 探しているのは、(株価が)割安で、その中でも安いなりの理由があると考えられる企業です。われわれは、その理由を変えられる。つまり、企業価値向上の手助けが可能です。

コロナで控えていた大物アクティビストがいよいよ動く!次ページでは、日立やソニー、キリン、マネックスなどの企業の名を挙げながら、日本企業のガバナンスを巡る率直な評価を明らかに。その上で、優良ガバナンス企業の共通点や、社外取が果たすべき役割、さらに日本企業に求めるものとは何かを直撃した。裏返せば、それができない企業は次の標的となるだろう。