熾烈なるエネルギー大戦#3Photo:Katsumi Murouchi/gettyimages

政府は脱炭素社会の実現に向けた「クリーンエネルギー戦略」で、原子力を最大限活用する方針を打ち出した。とりわけ次世代原子炉を担う体制について、大手電力会社と原発プラントメーカーを集約する「原発超再編構想」が水面下で議論されている。特集『熾烈なるエネルギー大戦』(全7回)の#3では、「原発超再編構想」の内実を解き明かす。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

島根原発の再稼働容認「やむを得ない」
島根知事の決断が潮目を変えた

「苦渋の決断だ」。中国電力島根原子力発電所2号機について、島根県の丸山達也知事は6月2日、「再稼働を容認する」と表明した。

 ウクライナ危機以降に加速した原材料高やエネルギー価格の高騰で、島根県の経済は疲弊していた。今後、懸念される電力需給逼迫、脱炭素社会への実現を踏まえ、地元経済界は島根原発2号機の再稼働を訴えていた。丸山知事は「(原発の)ある程度の活用は避けられない」と険しい表情を崩さなかった。

 東日本大震災による東京電力福島第一原発の事故以降、国内では依然として原発に対して慎重な意見が根強い。丸山知事の原発再稼働の容認は、その潮目を変えるほどのインパクトをもたらしつつある。

 原発を取り巻く“追い風”を受け、政府関係者は「いよいよ原発のリプレース(建て替え)の議論ができるのではないか」と期待する。

 政府関係者が、その意を強めるきっかけがあった。丸山知事の原発再稼働容認によって、原発のリプレース議論に移るための「ある基準」をクリアしつつあるからだ。

 次ページ以降では、原発のリプレース議論に必要な「ある基準」を定めた舞台裏を当時の関係者が明かす。また、リプレースの対象となる次世代原子炉の行方や、原発再稼働の先を見据えた「原発超再編構想」の内実に迫る。