株価・給料・再編 5年後の業界地図#16Photo:123RF

過去10年で売上高は6倍、営業利益は8倍と、工具通販大手として驚異的成長を続けるMonotaRO(モノタロウ)に死角はないのか。特集『円安・金利高・インフレで明暗くっきり! 株価・給料・再編 5年後の業界地図』(全24回)の#16では、就任11年目を迎えた鈴木雅哉社長に、後継者問題や競合他社への対応、為替リスク、国内外市場における5年後のビジョンについて聞いた。すると、鈴木社長は「アマゾンよりも怖い敵がいる」と明かした。(聞き手/ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

驚異的な高成長を続けるMonotaRO
円安・原材料高の業績への影響は

――直近の決算では純利益175億円、12年で売上高成長率20%以上と、まれに見る高成長を続けています。工具の販売市場で、どこに独自性、強さの源泉があるのでしょうか。

 商品をBtoBで調達されるお客さまが購入されるときは、従来であれば、専門の業者に問い合わせて各商品の見積もりを取っていました。MonotaRO(モノタロウ)なら1800万点以上の品ぞろえで、探している商品があると思っていただけるスケールを20年で築くことができました。

 ただ、それだけだと継続的に成長するビジネスモデルにはならなくて、世の中の“不”を解消することが大前提だと思っています。われわれはお客さまの“不”と商品のマッチングを最適化しています。データが集まり、アルゴリズムによって最適化することで、世の中のニーズに応える。だから利用者が増えるほどより便利になり、次もモノタロウを使おうと思っていただける。

――なるほど。そのためにデータサイエンティストの採用を3年前から倍増させているわけですね。データ強化は変わらないですか。

 今後も採用は実現したいと思います。ただ、それ以上に大切なのは、何を最適化するのかということ。例えば、サプライチェーンの最適化は非常に大きな領域になります。

――新たな物流拠点として、約60万点の在庫能力を持つ猪名川ディストリビューションセンターの本格稼働が始まりました。それもサプライチェーンの最適化のためだと。

 猪名川の物流センターは2年ほどかけて、出荷能力が1500億~2000億円になると思います。今後3~4年程度の成長をカバーすることが今回の目的です。より多くの出荷量で、約束した通りの納期でお届けするためです。

――円安、原材料高による業績への影響はありますか。

 一番は円安です。朝起きたら2円ぐらい安くなっているみたいな(笑)。そういう日があって最近びっくりします。

 円安だけでコストが2割上がっています。そこに原材料費の上昇が重なり、最大5割上がっているものもある。もちろん転嫁しなければならないものは転嫁させていただく。

――円安が加速する中、為替リスクを回避するために為替予約を行う企業もあります。ところが、モノタロウの有価証券報告書には、原則として為替予約等は行わない旨の記載があります。なぜ為替予約をしないのでしょうか。また、今後為替予約を行う予定があれば教えてください。

次ページでは為替予約の方針のほか、アマゾンなど競合への対抗策、M&A戦略に現場との対話や後継者問題など、鈴木社長に幅広く語ってもらった。鈴木社長にとって「アマゾンより怖い」存在とは?