金融DX大戦#17Photo:123RF

今秋、3メガバンクなどの大手5行が“異例”のタッグを組んで開発を主導した、新たな金融サービスが始まる。個人間で10万円以下のお金のやりとりを便利に行える「ことら送金サービス」だ。実務を担う合弁会社「ことら」は、このサービスをフックに二つの金融変革をもくろむが、「大き過ぎる野望」だとして、銀行業界からは完遂に対し懐疑的な声も出る。特集『金融DX大戦』(全22回)の#17では、ことらの思惑と、その成否を分ける“条件”について追う。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

新サービス「ことら送金」で
個人間送金の利便性が劇的に変わる!?

 もうこれ以上、世界に後れを取るわけにはいかない――。そんな危機感を背景にして、普段はライバル同士の3メガバンクとりそなホールディングス(HD)のグループ銀行が、“異例”のタッグを組んだ。

 新たな金融サービスの展開を主導し、今秋にも、個人間で10万円以下のお金のやりとりを便利に行える「ことら送金サービス」を始めようとしている。

 これまで銀行では、他行宛てに振り込みを行おうとすると手数料が高くつきがちだった。例えば3メガの場合、ATM(現金自動預払機)からキャッシュカードを使って他行に3万円以上を振り込む際には、330円の手数料がかかるのが現状だ。

 実はこれでも各行の振込手数料は引き下げられてきたのだが、ことら送金サービスを利用すると一気に世界が変わる。手数料はことらに接続する事業者が決定権を持つ決まりではあるものの、従来より大幅に安く個人間送金が行えるようになる見込みなのだ。すでに手数料無料の方針を打ち出した銀行もある。

 ことら送金サービスの実務を担うのは、サービス名にも名前を冠する「ことら」。三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそなHD傘下のりそな銀行と埼玉りそな銀行の4陣営が、25%ずつ出資した合弁会社である。そこで新たにローコストで構築した多頻度小口決済のための決済インフラを活用することで、大幅な手数料の引き下げを可能にする。

 むろん、手数料が安いだけではなく、送金方法も簡単にする。ことら送金サービスが利用できるアプリに口座番号と、それに対応する携帯電話番号を登録しておけば、携帯番号を入力するだけでことらユーザー同士で手軽に送金し合うことができるといった具合だ。利用者の利便性が向上することは間違いない。

 ただし、ことらが目指す「金融変革」を完遂するには、乗り越えなければならないハードルもありそうだ。

 次ページでは、ことら始動の思惑と、その成否を分ける“条件”について追う。