物流・部材調達の難問、豪雨災害による「供給網寸断」見据えたBCP構築法Photo:123RF

近年の日本は豪雨が多発
生産活動に甚大な影響

「生産ラインが止まっている」――それはサプライチェーン関係者にとって恐怖の一報だ。生産ラインの停止はさまざまな原因により起こる。ただ、どうしても自分が担当している部材や原材料の供給が滞っているせいではないか、と焦ってしまう。

 言い方は悪いが、「自分の担当品であってほしくない」と強く念じるだろう。そして“残念ながら”自分の担当品だった場合、その一日は忙殺される。納期遅延の理由は何か、納期はいつになるか、間に合わないなら代替品は手に入るか、対策や再発防止をどうするか。そして、補償請求はするべきか――。瞬時に複数のクエスチョンが降りかかる。

 もちろん、BCP(事業継続計画)の概念が浸透したことで、企業のリスク耐性は強化されている。阪神・淡路大震災や東日本大震災、熊本地震を経て、多くの企業がサプライチェーンの強靭化に取り組んできた。

 ただ、大震災が起こらなくても、近年の日本は豪雨が多発している。豪雨は、地域の人々の生活や生産活動に多大な影響を及ぼす。そして厄介なのは大震災よりも頻発することだ。

近年で生産に影響が及んだ豪雨災害を挙げてみる。

・令和2年7月豪雨
・令和元年の台風第19号
・平成30年7月豪雨(通称:西日本豪雨)

 なかでも記憶に残るのは「平成最悪の水害」といわれた、平成30年の西日本豪雨だろう。当時、自動車メーカーと自動車部品メーカーが集まる中部地方に甚大な影響を及ぼし、各工場が稼働を停止したり、物流が滞ったりした。

 そこで今回は、取引先の災害リスクまでも考慮したBCPを構築する具体的な方法を思案していきたい。最後には、サプライチェーン関係者や経営幹部が絶対読むべき、世界銀行が日本の気候変動リスクを分析したリポートも紹介する。