軍事ビジネス&自衛隊 10兆円争奪戦#5Photo:NurPhoto/gettyimages,123RF

日本の防衛企業の衰退が止まらないのは、販売先が「自衛隊一択」に限られる特殊な市場構造にあるからだ。2014年に安倍政権が武器輸出三原則を改めて、企業は一定の条件下で輸出は可能になったが、ほとんど実績は上がっていない。一方で、同じ時期に防衛産業の輸出拡大に大成功したのが韓国だ。特集『軍事ビジネス&自衛隊 10兆円争奪戦』(全25回)の#5では、日韓の格差がここまで広がった理由を明らかにするとともに、日本の防衛産業が海外に打って出るための処方箋についても取り上げる。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

ウクライナ危機を背景に
輸出額は過去最高を更新

 7月下旬、ウクライナと国境を接するポーランド政府は、韓国から武器を大量購入することを発表した。世界を驚かせたのは、その規模だ。戦車を約1000両、自走砲を約600両、戦闘機を48機購入する。

 契約の総額は公表されていないが、韓国メディアによると、1兆円を軽く超える規模になるという。これだけで過去最高だった韓国の年間の輸出総額を上回る。

 ウクライナ危機を背景に韓国の防衛産業の快進撃は続くが、翻って、日本の防衛産業は青息吐息だ。

 企業の撤退が相次いでおり、産業基盤の弱体化に歯止めがかからない。危機打開につながるはずだった輸出も、過去8年間の実績は完成品の輸出がたった1件というありさまだ。

 共に製造業大国である日韓の間で、なぜここまで格差が広がってしまったのか。

 次ページでは、韓国の防衛産業が躍進した構造を明らかにすると共に、日本の防衛産業が海外に打って出るための処方箋についても取り上げる。