軍事ビジネス&自衛隊 10兆円争奪戦#14Photo:Jeffrey Coolidge/gettyimages

台湾有事の際、多くの日本人は米軍が台湾を守るために中国と戦ってくれると思っている。自衛隊が戦いに参加するとしても米軍の「後方支援」にとどまり、被害は大きくならないと楽観視する人も少なくない。ところが安全保障の専門家の間では、自衛隊がかつてない被害を受ける“過酷なシナリオ”が主流になりつつある。米軍の作戦によっては「自衛隊が正面から人民解放軍と戦うケースもあり得る」というのだ。特集『軍事ビジネス&自衛隊 10兆円争奪戦』(全25回)の#14では、台湾有事の本当のリスクに迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

日本は「米軍の後方支援」ではない?
中国への攻撃を要請される局面も

 8月2日の米国のペロシ下院議長による台湾訪問は、「5年後」などといわれていた台湾有事の“時計の針”を一気に前に進めたかもしれない。

 台湾を自国領と主張する中国はペロシ氏の訪台に反発し、台湾を包囲するように大規模な実弾演習を行った。米軍も空母を派遣し、いつ軍事衝突が起きてもおかしくない一触即発の状況になった。

 緊迫する台湾情勢を巡っては、安全保障の専門家の間では常識でも、国民があまり知らない“不都合な真実”がある。それは、米国が日本の自衛隊に中国の人民解放軍への攻撃を要請することが考えられ、日本がそれに応じた場合、大損害を被る可能性が高いということだ。

 ほとんどの日本国民は有事の際の日本の役割は「米軍の後方支援」だと考えているだろう。だが、日本が台湾有事に巻き込まれ、気が付いたら中国と直接戦っていたという事態は十分にあり得るのだ。

 次ページでは、日本人が直視してこなかった不都合な真実を明かしていこう。台湾有事の「穏当シナリオ」と「過酷シナリオ」の2パターンを題材にして日本の課題や用意すべき防衛装備などを明らかにする。