軍事ビジネス&自衛隊 10兆円争奪戦#24Photo:NurPhoto/gettyimages

ロシアから軍事侵攻を受けているウクライナは、サイバー攻撃の影響をコントロールしていると伝えられるが、実際はどうなのか。特集『軍事ビジネス&自衛隊 10兆円争奪戦』(全25回)の#24では、防衛省の初代サイバー防衛隊長を務めた佐藤雅俊氏に、両国で繰り広げられる「サイバー戦」の実態について聞いた。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

ロシアのサイバー戦は組織的で用意周到
中国のハイブリッド戦の体制も脅威

 サイバー攻撃などによるハイブリッド戦争の代表的な成功例が、2014年のロシアによるクリミア侵攻だった。

 ロシアはサイバー攻撃でウクライナの通信を遮断した上で、ウクライナ兵に特定の場所に集合するよう偽の指令を出した。そこに集まった兵士を一網打尽にしたという。

 ウクライナはこの反省を踏まえ、米マイクロソフトなどの支援を受けてサイバーセキュリティーを向上させた。22年2月に始まったロシアからの軍事侵攻に抵抗できていることの一因に、サイバー対策の強化があることは間違いない。

 しかし、元防衛省初代サイバー防衛隊長の佐藤雅俊氏(ラックのナショナルセキュリティ研究所長)は「ロシアのサイバー攻撃は実はそれなりの成果を上げている」と評価する。サイバー戦においては、ウクライナが圧勝とは言い切れない事情があるようだ。

 どういうことか。次ページではロシアのサイバー戦が侮れない理由を明らかにする。