パウエルFRB議長景気後退覚悟でインフレ抑制に向け、大幅利上げを継続するFRB。年内にも政策金利を4%以上に引き上げるとみられる Photo:AFP/アフロ

米国のインフレのピークは見えない。利上げは続き、ドル高円安も当面継続する。景気後退は必至だ。円安に苦しんでいる日本経済だが、実は真の苦境は円高反転時にこそ始まる。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

米国のインフレ止まらず
財務省・日銀に打つ手なし

 米国のCPI(消費者物価指数)が6月に続き世界の市場を揺さぶった。9月13日に発表された8月の前年同月比上昇率は市場予想の8.1%を上回る8.3%。前月比も0.1%低下が市場予想だったが、実績は0.1%増となった。

 エネルギーや食料品を除いたいわゆるコアCPIの上昇率も6.3%と5カ月ぶりに上昇に転じ、前月比は0.6%増と市場予想の2倍の幅だった。

 原油価格が低下していたこともあり、インフレのピークアウトが見えてくるのではとの期待が市場にはあった。だが、その期待は見事に打ち砕かれた。

 長期金利の指標である米国の10年国債利回りの13日の終値は3.417%と3.4%を超えた。9月20日、21日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)で、市場が織り込む利上げ幅の予想は、0.75%の確率が14日時点で74%となった。0.5%の確率はゼロとなり、代わって1%の確率が26%だ(本稿執筆は9月15日)。

 市場が織り込む利上げの終着点も3%台後半から4%台前半に切り上がった。利上げの強化を嫌気し、ニューヨークダウは12日に1276ドル下落し、終値は3万1104ドルだった。

 円の対ドルレートは今、米国の金利見通しに左右されている。米国の長期金利上昇や利上げの終着点が切り上がったことを受けて、12日のニューヨーク市場では、1ドル=142円台から144円台に下落した。

 この先も当面、インフレのピークは見えない。「クリーブランド連邦準備銀行のCPIナウキャストでは、9月の前年同月比上昇率は8.2%前後、コアベースで6.6%前後」(小野亮・みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部プリンシパル)である。また、失業者の2倍に上る求人件数など雇用の需給逼迫と、それに伴う賃金上昇が続いている現状から見て、少なくとも年内は確実に利上げを継続していくだろう。

 政策金利のピークは現時点で市場が想定するように、4%を超えるだろう。マイナス金利政策も含め現状の金融緩和政策を継続する日本と金利差はさらに拡大し、円の対ドルレートも、145円を超えて下落していく可能性は高い。

 日本銀行は14日、金融機関に対し、円買いドル売り取引のレートを聞く、レートチェックを実施した。これは円買いドル売り介入に向けた準備である。

 ただ、インフレに苦しむ米国が介入に賛同、協調してくることは考えにくい。日本の単独介入では効果は乏しい。また、これまでの経緯を振り返っても、ドル高に勢いがある局面での介入で相場を押し戻すことは期待できない。財務省・日銀に相場を転換させる有効な手段はない。