ケミカルから住宅、エレクトロニクス、医薬・医療に及ぶ超多角化経営が強み。中期経営計画の折り返しへの施策を聞いた。

旭化成社長 藤原健嗣<br />石油化学は再編の流れ<br />“融合”で多角化に邁進Photo by Toshiaki Usami

──世界展開を加速させているアクリロニトリル(アクリル繊維やABS樹脂の原料)は、市況が悪化している。戦略に変更はないか。

 国内では稼働を7割程度に落としているが、中長期的には世界の需要は2桁で伸びるため、海外で積極的に事業拡大を続ける。昨年は高いコスト競争力を持つタイ工場を立ち上げ、今年は韓国工場の増強も完了する。サウジアラビアの新工場はコンビナート全体の計画が遅れているため、稼働を予定していた2015年末から1~2年遅れるだろう。

──昨年、約1800億円をかけて買収した米国の医療機器メーカー、ゾール・メディカルとどのようにシナジーを出すのか。

 ゾールはまだ若い会社だが、伸び盛りの商品を複数持ち、米国で高く評価されている。旭化成がマネジメントをサポートすることで、共にアジア市場を開拓していく。

 ゾールを通じて救命救急分野でのさらなるM&Aも狙う。当社既存の医薬・医療事業と合わせ、20年には売上高5000億円規模に育てる計画だ。

──全社横断的な新規事業創出に取り組んでいる。今年、物になりそうか。

 まずは、窒化アルミニウムを用いた紫外線発光ダイオード技術。さまざまな殺菌・消毒用途の展開が可能で、すでに米国でマーケティングを始めており早く事業化したい。

 次世代型蓄電装置であるリチウムイオンキャパシタは、量産試験を行う。世界シェア5割のリチウムイオン電池セパレータの技術を利用して、旭化成独自のキャパシタを開発できた。電池と組み合わせれば電気自動車やハイブリッド車のエネルギー効率を上げられる非常に面白いものだ。

 エレクトロニクスや医療の分野に限らず、今の時代は“融合”が重要だ。自社のキーデバイスだけにこだわらず、他社のいいキーデバイスと組み合わせていきたい。