SAPはコンピュータソフトウェアの開発販売・コンサルティングで全世界6万人を超える人員を擁する、IT業界を代表するグローバル企業である。そのSAPにおいて、生粋の日本人ながら全社員の上位2%に6年連続で認定され、30歳時にSAPジャパンにおいて最年少で部長となった人物が金田博之氏だ。その後も会社員として圧倒的な結果を残し、36歳でSAPジャパンのチャネル営業を統括する責任者に就任している。
近著の『結果は「行動する前」に8割決まる』では、そうした実績の裏にあった各国のSAP社員との交流が一部紹介されたが、今回は金田氏がこれまで交流をもったアマゾン、グーグル、HP、マイクロソフトといったグローバル企業のトップ層のすごさの秘密を言語化してもらった。

コレだけをやればいい! と示してくれたボス

 私の上司にイタリア人のFさんがいました。2006年に私がSAPジャパン内にインサイドセールスをつくったときの、グローバル会社のアジア担当のボスでした。私にとっては初めての外国人上司だったこともあり、彼の仕事のやり方はいまでも鮮明に憶えています。

 当時、インサイドセールスはヨーロッパを先駆けとして急拡大し、アジアでも日本は中国に次いで、その導入を進めていました。日本で組織をスタートさせたのが2006年8月で、事業化したのが3ヵ月後の11月です。その急拡大する市場のなかで、Fさんは日本のビジネスモデルから各国で共通する事項をピックアップし、インド、韓国、オーストラリア、シンガポールと各国・各地域にシェアさせていきました。

 Fさんは細身で一見、インパクトのない人物なのですが、私はそのムダのない統率力に驚いたものです。

 まず、先行する上海に視察・情報収集に行ったのが2006年8月。当時、2ヵ月くらいは情報収集期間と考えていたのですが、Fさんはその時期に、すでに立ち上がっていたプラハとバルセロナの情報収集を終え、成功モデルを吸収していました。その成功モデルを私に会っていきなり提示してきたのです。

 「プラハもバルセロナも外部コンサルタントを使って6ヵ月かかった。きみには成功モデルのエッセンスを提示するから、自前で3ヵ月でスタートさせてくれ」
 ということでした。