2013年も様々なテレビドラマが出揃ったが、その中でひときわ異彩を放つ作品がある。タイトルはその名も『おトメさん』(テレビ朝日/毎週木曜21時放映)。

 “トメ”とは、世の嫁たちがネット上で呼ぶ「姑」のこと。このタイトルが示すように、嫁と姑の果てなき攻防劇を描いたものだが、従来の「嫁・姑」ものとは異なり、明らかに大きな異変が生まれている。

 それは、姑が嫁をいびり倒す――という古典的図式ではなく、姑が完璧な嫁を怖がる――という一風変わったものだ。“私、ヨメが怖いんです。”という独白風キャッチコピーも、その心情をリアルに吐露してセンセーショナルである。

 ストーリーの概要はこうだ。同居する姑にいじめられ続けてきた主婦・麻子だが、姑の死により、その呪縛から解放される。主婦生活をのんびり堪能しようと思った矢先、最愛の1人息子が嫁を連れてくる。それが李里香(りりか)だ。美しく完璧な李里香だが、麻子はその言動に少しずつ不信感を強め、周辺を調べ尽くしていく――というコメディタッチの心理サスペンスだ。

 姑の麻子を黒木瞳、嫁の李里香を相武紗季が不敵に演じるほか、脚本を手がけるのは『白い巨塔』『GOOD LUCK!!』の井上由美子である。

 さてここに、興味深いデータがある。日経BPコンサルティングが、姑と同居する有職者の女性(20~40代)を対象に行った調査(2012年12月7日~11日にウェブを通じてリサーチ。有効回答数は310件)によると、嫁・姑関係について「仲が良い」「まあ仲が良い」と回答したのは合計67.7%。ほぼ7割が良好な関係を築いていることがわかった。さらに二世帯住居の居住者で見ると、実に約9割が良好であると答えており、一般のイメージ以上に世間の嫁・姑関係は穏やかなものと言えそうだ。

 これは、前述の麻子のように、姑のいびりを身をもって経験した世代は、嫁に同様の思いをさせたくないと、友好的かつ遠慮がちな態度をとることが増えていることが一因にあると考える。筆者の周囲にも、嫁との軋轢を恐れて同居を望まない親類や、努めて嫁と友好的な関係を築こうと心を砕く知人女性もいる。

 さらには、最近の女性たちは仕事や経済力を手にし、経験値も増え、見識を広げている。姑たちにとって、そんな彼女たちを敵に回そうとする意識は、昔よりも格段に低くなっているのではないか。

 テレビドラマ『おトメさん』には、古典的スタイルで嫁をいびり倒す隣人女性が登場するが、ヒロイン麻子より1~2回り年上である彼女の姿は、麻子世代のアンチテーゼともとれる。

 このように、嫁・姑関係は時代とともに変容し、その力関係を大きく変えている。とりわけ嫁世代の元気な姿が印象的だが、社会進出する現代女性たちを投影させているようで、実に興味深い。

(田島 薫/5時から作家塾(R)