震災後の省エネルギー、環境問題への意識の高まりも追い風となって、街でさっそうと自転車を乗りこなす姿を以前よりもよく見かけるようになった。半面、歩行者を相手に自転車側が加害者となる事故も増えているという。道路交通法上は自転車も立派な「車両」。もしあなたが加害者となってしまったら、どのような法的処分が待っているのだろうか。また企業として、仕事で自転車を利用する場合に注意すべきことは。(弁護士:冨宅恵 協力:弁護士ドットコム

クルマがらみの交通事故が減る一方で
自転車対歩行者の交通事故は増加傾向

「私は、通勤に自転車を使用しています。先日、いつものように自転車に乗って歩道を走行していたところ、突然女性がビルから出てきました。ビルの入口付近には自動販売機が設置されていたため、女性が歩道に差しかかる寸前まで女性の存在に気付かず、私の自転車が女性に接触し、女性を転倒させてしまいました。

 また、私自身も女性の存在に驚いたのと、女性との接触を回避しようとして無理にハンドルを切ったために転倒してしまいました。私は、額と頬、手のひらに擦過傷を負う程度で済みましたが、女性は転倒した際に側頭部に擦過傷を負い、手首を骨折しました。

 事故後、救急車を呼び、病院まで付き添った上で、私の氏名、住所、連絡先を教え、後日連絡してほしいと伝えて病院を後にしましたが、女性からどの程度の請求をされるのか不安でたまりません。こういうケースでは、私が加害者として一方的に損害を賠償する責任を負うことになるのでしょうか」

 少し前までは自転車での事故といえば、自転車に乗っている方が被害者であることが多かった。ところが最近ではこの質問のように、自転車に乗っている側が加害者となる事例が少なくない。

 警察庁の調査による平成13年と平成23年の交通事故の件数を比較すると、クルマ対歩行者の事故は7万1737件から5万5284件に減少しているにもかかわらず、自転車対歩行者の事故は1807件から2801件に増加している。自転車は道路交通法では軽車両に分類されており、自転車と歩行者の事故は立派な「交通事故」。事故により人に損害を負わせた場合は、損害を賠償しなければならなくなる。