週刊ダイヤモンド 外国為替市場では、1日に3兆2100億ドル(2007年4月時点)ものカネが動く。そのほとんどは投機マネーだ。投機マネーは世界を駆け巡りながら、為替相場を上へ下へと変動させる。為替レートは時として、長期的な均衡水準から乖離し、大きくぶれる。だが、乖離していようといなかろうと、その為替レートに応じてヒト、モノ、カネが動く。マネーは為替を通じて、経済に大きな影響を及ぼしているのである。

 こうした深い関係にある「為替と経済」を、さまざまな切り口で解説してみたのが、この66ページにわたる特集である。為替の疑問を解き明かしていくうちに、日本経済や世界経済の本当の姿が見えてくる。一般に広まる「常識」の間違いもわかる。

 特集の内容を足早にご紹介しよう。

Part1 為替が動くとどうなる?

海外通貨高・円安の動きがクルマ、ブランド品、食品といったモノの価格を左右し、さらには人の動き、給料などにも影響を及ぼしている様を描く。豪ドル高で京都の舞妓さんは大忙し、タイなどで年金生活を送る人たちからは円の価値下落で悲鳴があがっている。

Part2 円高のうそと本当

「円高はマイナス」というイメージが染み付いているが、そもそも1ドル100円を切る水準でも円高とはいえない。企業収益への悪影響もかなり縮小しつつある。GDPへのインパクトを含めて、ここで総整理する。コラムでおなじみ野口悠紀雄教授の問題提起とあわせて、円高の真実、日本企業の実像を見つめる。

Part3 為替はどう動く?

為替の動きは予測できるか。巨大市場の最前線で勝負する為替ディーラーの答えはノーだ。目先のレートはランダムに動く。ただし、長期スパンで見ればモノサシとなるものがある。インフレ率で調整した実質相場指数だ。この指数を使って、さまざまな通貨のレートをとらえ直す。

Part4 「外貨投資」速習講座

筆頭格の外貨預金、高金利債券、外貨投資ファンドなどの中身を解剖し、円高で悪影響を被るカラクリを解説する。さらにFX投資の必須ポイントをおさえ、通貨ストラテジストに“為替頭脳”の鍛え方を学ぶ。ジム・ロジャーズ氏の投資スタンスも紹介。

Part5 これからどうなる?

不安燻る「ドル」、ドルを激しく追い上げる「ユーロ」、最大の波乱要因「人民元」、そして通貨制度の未来を展望する。クライド・プレストウィッツ氏、行天豊雄氏、内海孚氏、榊原英資氏の3人の元財務官に20~30年後の姿を聞く。

 経済の動きに関心のある方はもちろん、外貨の運用に興味を持つ投資家のみなさんも、ぜひ手にとっていただきたい。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 小栗正嗣)