健康・医療機器ブランドとして信頼されるオムロンは、世界で約40万台の販売実績を誇る米国カーディアックサイエンス社とタッグを組み、高度な心電解析技術を搭載したAEDの販売に力を入れている。

京都マラソン2012では、スタートからゴールまでの沿道に、AEDを持った救護スタッフが待機していた

 昨年3月に行われた「京都マラソン」で、心肺停止状態になった1人のランナーが、AEDによる救急措置によって一命を取り留めた。

 マラソン会場に用意されていたのは、オムロンヘルスケアのAED「パワーハート G3」。同社では大会のために約90台のAEDを準備し、沿道では大会スタッフが万一のときに備えていた。

「実際に命を救われたと聞くと、うれしく思うのと同時に、あらためてAEDとは人の命を救う高度管理医療機器であり、襟を正して販売しなければと思います」と語るのは、平井正尚AED営業部長だ。

ホームメディカルケアを軸に
事業を展開

 オムロンヘルスケアが、AEDや心電計など医療機器の世界的なリーディングカンパニーである米国カーディアックサイエンス(CSC)社と、日本市場におけるCSC社のAEDの独占販売契約を締結したのは2011年。同年10月より、非医療従事者向けのAED「パワーハート G3 HDF―3000」の販売をスタートした。

 もともとオムロンヘルスケアの事業コンセプトは「ホームメディカルケア」である。家庭で計測した生体情報や行動情報を、個人の健康管理から医療現場まで共通に活用することで、生活習慣病の予防、治療、疾病管理を行うための商品やサービスを提供している。具体的には、自動血圧計や電子体温計、歩数計や携帯型心電計などの商品。いずれも、独自の生体情報センシング技術と豊富な臨床データを背景に、医療現場で信頼される精度の高い測定機器を提供している。

 そんな革新的な健康医療機器を開発してきた同社が、AEDの分野に本格進出したのはなぜか。平井部長はこう説明する。

「当社では、家庭で計測した生体情報を医療機関での診断や治療に役立てる“ホームメディカルケア”というコンセプトに基づき事業を展開しています。その事業を通じて人々がいつまでも健康でいられる社会を実現していきたいと考えています。AEDを必要とされる心肺停止状態の患者さまのほとんどが医療機関へ搬送する時間的余裕がありません。AED事業を介して、医療機関に運ぶ時間を稼ぎ、最も重要な生命を救うお手伝いを行うことは、私どもの事業活動の考えに沿っています。また、私たちの使命とする『地球上の一人ひとりの健康ですこやかな生活への貢献』の実践につながることから、この事業への参入が決まりました」