人生とはプランに沿って進めるのではなく、自分の手で臨機応変にデザインしていくもの。これまでのキャリア戦略が通用しなくなっている今、人生の岐路でどのように進むべき道を選び取っていけばいいのだろうか。大学生でカリスマブロガーとなり、電通を経て現在は美容クーポンサイト「キレナビ」編集長を務める伊藤春香(はあちゅう)さんと、生活実験「ノマド・トーキョー」で都市を旅するように暮らし、『僕らの時代のライフデザイン』を執筆した米田智彦さんが、これからのライフデザインについて語り合った。

やったことの後悔は日々小さくなり、
やらなかったことの後悔は日々大きくなる

米田:はあちゅうさんの場合、何年周期くらいで人生の転機が訪れます?

伊藤:だいたい2年か2年半くらいです。振り返れば、大学時代の最初の2年間は1日に47万PVを記録したブログ「さきっちょ&はあちゅうの恋の悪あが記」とその“おまけ”で過ぎ、次の2年間は「世界一周」やブログを使った他のプロジェクトに携わって。そして社会人になって最初の2年間は電通で、今はトレンダーズで美容クーポンサイト「キレナビ」の編集長をやっている。2年ごとに自分のいる場所も周りの人も変わっていくんです。今は長期的な目標を持つのではなく、短いスパンで人生のベクトルを自在に変えていったほうがいいな、と実感していますね。

キャリアプランなんて無意味だ!<br />人生をどうワクワクさせられるか考えよう米田智彦(よねだ・ともひこ) 1973年、福岡市生まれ。青山学院大学卒。研究機関、出版社、ITベンチャー勤務を経て独立。フリーの編集者・ディレクターとして出版からウェブ、ソーシャルメディアを使ったキャンペーン、イベント企画まで多岐にわたる企画・編集・執筆・プロデュースを行う。2011年の約1年間、家財と定住所を持たずに東京という“都市をシェア”しながら旅するように暮らす生活実験「ノマド・トーキョー」を敢行。約50カ所のシェアハウス、シェアオフィスを渡り歩き、ノマド、シェア、コワーキングなどの最先端のオルタナティブな働き方・暮らし方を実践する100人以上の「ライフデザイナー」と出会い、その現場を実体験する。

米田:じゃあトレンダーズに転職して2年くらい経つから、もうそろそろ次……なんてことに?(笑)

伊藤:……ありえなくはないですね(笑)。今の会社にも、ある日突然社長に出会って1時間お話をしたときに、「電通を辞めてここに行こう!」と直感で思ったわけですから。

米田:僕もだいたい2、3年周期かもしれない。ソーシャルメディアにハマったのが2009年。2年ぐらいはその可能性を追いかけて、次はソーシャルとリアルの融合に興味を持って、「ノマド・トーキョー」をやったんです。会社は変わるかもしれないけれど、はあちゅうさんは何らかの仕事をたぶんずっと続けるんですよね?

伊藤:うーん、わかんないです、それも(笑)。

米田:あっ、そこも決めてないんだ!(笑)

伊藤:はい、決めてないんです。キャリアプランとかも何にもない(笑)。

米田:(笑)。実は、僕の新刊『僕らの時代のライフデザイン』のなかで、計画書に沿って進めていくような人生設計ではなく、自由で臨機応変な人生計画とか生活とかキャリアのあり方を描くことを「ライフデザイン」という言葉で表現してみたんです。

 プランじゃなくて「デザイン」という言葉を選んだのは、あらかじめ答えが決まっている解答問題を解くのではなく、自分で作りだす、かたちづくってみる、プロトタイプをつくってみて、考えて、またつくってみる。そんな意味を込めたんです。はあちゅうさんのこれまでのキャリアを見ても、人生の切り拓き方を見ても、「ライフデザイン」的ですね。まさに、「ライフデザイナー」だなぁと思います。

キャリアプランなんて無意味だ!<br />人生をどうワクワクさせられるか考えよう伊藤春香(いとう・はるか) 美容クーポンサイト「キレナビ」編集長/ソーシャル焼き肉マッチングサービス「肉会」代表。週末作家。慶應義塾大学法学部政治学科卒。在学中にブログを使って、「クリスマスまでに彼氏をつくる」「世界一周をタダでする」などのプロジェクトを行い、女子大生カリスマブロガーと呼ばれる傍ら、レストラン、手帳、イベントなどをプロデュースするなど、「はあちゅう」名で幅広く活動。2009年電通入社後、中部支社勤務を経て、クリエーティブ局コピーライターに。2011年12月に転職し、トレンダーズで美容クーポンサイト「キレナビ」編集長に。愛称は「はあちゅう」。

伊藤:ありがとうございます。輝かしい称号を頂けてうれしいです(笑)。

米田:あとは、はあちゅうさんも先ほど言ってましたが、「こういうことを言ったらバカにされるんじゃないか」とか「恥ずかしいんじゃないか」という制約を自分に設けずに、やりたいことやイメージを自由にキャンバスに絵を描くように広げてみる。どこかに正解があって、それに自分を合わせていくんではなくて。

 国も会社も自分自身さえも、この先どうなるか、何が起こるかわからない。でも、どんなことが起きても対応できるようなしなやかな姿勢を保っておく。ある意味、武道のような感じかな。はあちゅうさんは、次の「ある日突然」がきたとき、パッと対応できるような心構えみたいなものは自分のなかに持っていますか?

伊藤:心構えというか常に思っているのは、「ワクワクするほうに飛び込む」っていうこと。敬愛する小説家の林真理子さんが以前おっしゃった、「やったことの後悔は日に日に小さくなるけど、やらなかったことの後悔は日に日に大きくなる」という言葉にすごく感銘を受けて。

 電通からトレンダーズへ移るときも、「ベンチャー企業への転職って、大丈夫かな」と正直不安に思った瞬間もありますが、同時に「電通にこのままいたら、5年後も10年後も同じビルに通って、似たような机に座って相変わらずコピーを書いているのかな」とも考えた。しかも当然ながら、トレンダーズに行ったときの人生のほうがそのときは想像できなかったんですよね。だからトレンダーズを選びました。どうせなら、行く末を想像できないもののほうが見てみたいじゃないですか。

米田:そうですね。映画でも結末がわかったとたんにつまらなくなりますからね。

伊藤:私も人生の岐路に立ったとき、いつもそうやって自分なりの「選択の基準」に照らして進むべき道を選び取ってきたんです。だからあまり迷うことはないですね。