中ロ、天然ガスで覚書を締結で<br />高まるLNG対日輸出の期待世界最大の天然ガス国家と将来の最大消費国の協力は、注目度が高い
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 中国の習近平国家主席が、初の外遊先として訪問したロシアのプーチン大統領との会談で、エネルギー分野での協力で合意した。

 注目されるのは、両国を結ぶ天然ガスパイプライン建設での覚書の締結だ。今回の会談では、東シベリアから吉林省など中国東北部に年間380億立方メートルの天然ガスを輸出することが決められた。供給期間は30年を予定し、中国はロシアからの最大の天然ガス購入者となる可能性が出てきた。

 両国は2006年から、西シベリアを含めたパイプライン交渉を始めていたが、価格面で交渉が難航していた。今回の覚書でも価格面は棚上げされ、6月までに合意を目指すことになっているが、外交筋からは「これまでより交渉がまとまる条件はそろっている。年内に動きがあったとしてもおかしくない」(政府関係者)とみる向きが強い。

 というのも、ロシアは最大顧客である欧州へのガス輸出が鈍っており、今後急激に需要が伸びる中国は是が非でも押さえておきたい市場。中国側からしても、主要エネルギーである石炭がPM2.5をはじめとする環境問題で批判されており、よりクリーンな天然ガスの必要性も高まっているからだ。

 つまり、東アジアへの販路拡大を焦るロシアが価格面で折れることがあれば、この巨大プロジェクトが一気に動きだす条件は整うのだ。

 こうした動きを、日本の関係者も固唾をのんで見守る。

 中ロパイプラインが計画されている東シベリアは、日本とロシアが昨年、LNG(液化天然ガス)の輸出基地建設を推進することで合意したウラジオストクに近い。このため中ロ交渉がまとまれば、現在は「詳細が見えてこない」(商社関係者)というLNGプロジェクトも一気に進む可能性がある。

 さらに、「中ロの合意次第ではロシアからLNGで、安い値段を引き出せる」(大手電力幹部)というもくろみもあり、燃料費高騰による電気料金値上げに頭を悩ませる国内の業界にわずかな光明が差す可能性もある。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)

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