コスト削減や変化への迅速な対応を求める経営側の意識と、現状のシステムとのギャップを解消する一つの有効な策となるのが、基幹システム刷新を行うITモダナイゼーションである。ITモダナイゼーションを事業化したコベルコシステムは、村田製作所をはじめとする製造業から、金融・保険、サービス、流通など200を超えるプロジェクトを手がけてきた。企業の、いわば経営基盤とも言える基幹システムを生まれ変わらせるために、同社はどのようなアプローチをとっているのか。

閉ざされたシステムを
世界標準に変身させる

 神戸製鋼所のシステム子会社から事業をスタートし、これまでに数多くの実績を誇るコベルコシステムにとって、ITモダナイゼーションとは“システム近代化”と同義語である。中でも、メインフレームなどの上で構築された古い基幹系システムを、Javaという言語に置き換える“リビルド”を得意とする。レガシーシステムのJava化と言い換えてもいいだろう。

「Javaは世界で最も適用されているプログラミング言語の一つです。古いシステムをJava化することで、先進のオープンソースの世界の知見を利用できるようになります。プログラマーも人件費の安いアジアなど、世界中にいますから、開発要員に困ることもありません。他のシステムとの連携も容易になり、ハードウエアの選定の幅も広がります」とコベルコシステムの川田洋平氏はメリットを語る。

営業本部 第3営業部 西日本グループ グループ長 川田洋平氏

 古いテクノロジーで開発されたソフトウエアは、特定の機器でないと使えなかったり、他のソフトとの連携がとれずに、閉鎖的な状況に陥りやすい。結果として、新しいビジネスの展開や新サービスの追加に対応できない。「IT部門の多くはこうした現状に苦しんでいます。経営からのニーズに応えられない背景には、変化に対応できないシステムの存在があるのです」と川田氏は現状の課題を指摘する。

 しかし、Java化しておくことで、そうした恐れはなくなる。Java化は将来に向けた情報基盤を整備することでもある。整備しておけば、変化に迅速に対応できるようになる。「問題はどこからどう進めていけばよいのかノウハウがないことにあります」と川田氏。方法論やツールは数多く存在するが、経験がなければ使いこなすのは難しい。今のビジネスを支えているシステムだけに、試行錯誤の余裕もない。失敗が許されないプロジェクトだけに、同社のノウハウが生きてくるのである。

大規模プロジェクトで
豊富なノウハウを蓄積

 同社のITモダナイゼーションのビジネスが大きく前進したきっかけは、2006年から始まった村田製作所のシステムの再構築のプロジェクトだった。

インダストリーソリューション本部 西日本開発部 部長 植村隆幸氏

 当時、村田製作所の基幹系システムはメインフレームで稼働していたが、古いテクノロジーのシステムの保守ができる技術者が少なくなっているなど、保守性の悪化というリスクを抱えていた。加えて、1日1回しか受注データが取り込めないなど、ビジネスの変化のスピードに対応できず、顧客満足度の向上にも課題があった。危機感を覚えた同社はシステム全体を一新しようと決断する。

「バックボーンが同じ製造業であり、オープンシステムのノウハウがあったことから、当社に声がかかったのです」とこのプロジェクトの責任者を務めた植村隆幸氏は語る。バッチ処理とオンライン処理の両方の基幹系システムをJava化するという取り組みで、同社でも経験したことがない大規模なプロジェクトだった。

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