ラスベガスのカジノに採用

 ラスベガスのカジノの夜を彩る装飾照明。そこに使われる製品で圧倒的シェアを誇るのが「トキスター・テープライト」。使いやすさと見せる光が受けて、日本の国内でも多くの施設で採用されている。

 トキ・コーポレーションは建物の装飾照明や間接照明のメーカーである。設立は1971年。海外の新技術紹介や商品開発をコーディネートする技術商社のような業務からスタートした。「その時点では、メーカーになろうとは思っていなかった」と時枝直満社長は振り返る。

 数年後、米国の照明会社から装飾照明の新用途に関する相談を受けたことが製造業に転身するきっかけになった。当時扱っていた導電性樹脂フィルムに表示用の小型電球を組み合わせてシート状の装飾照明を作るというアイディアを提案したのである。これがヒット商品「トキスター・テープライト」に結実した。

 当時の装飾照明は、透明パイプの中に数十個の電球を入れたシリーズ配線が主流だったが、この方式には弱点があった。シリーズ配線のため、電球が一つ切れただけでも、ブロック全体がダウンしてしまう。それに対しテープライトは、テープ状のフラットケーブルに電球を配置するとともに、すべての電球が電気的に独立した回路になっているため、たとえ電球が切れても、切れた電球だけを交換すればよいというスグレモノだ。

 テープライトはラスベガスのカジノに採用されたのを皮切りに、たちまち米国市場をつかんだ。また、84年にディズニーパークに採用され一躍知名度を上げたのが契機となり、日本市場でも急速に普及した。今日、ラスベガスでは100軒以上の施設が採用、日本でも大型遊戯施設の大半が採用するなど、テープライトはテープ状装飾照明分野で日米両国において圧倒的な市場シェアを持つまでになった。

人工筋肉の実用化にも取り組む

 同社ではベース照明は扱わず、分野を装飾照明に限定。これが他社との差異化につながっている。最大の特徴は「照明本来の機能を引き出すことに徹し、“見せる光”を創る工夫を続けていることにある」と、時枝氏は言う。その言葉どおり、同社の照明には他社製品と一線を画すものが多い。

 その代表例が、最近のテープライトに使用されているLEDランプの「トキレッズ」。市販のLEDランプは正面方向に強い光を出すが、横から見ると、点灯しているかどうもわからないくらい視野角が狭い。これに対し、トキレッズは白色電球のように全周方向へ光を発する指向特性を持ち、真横からでも光がよく見える。どちらが装飾照明にふさわしいランプであるかは、誰が見ても一目瞭然である。

 小回りのきく製品開発も強みの一つ。デザイナーや設計者は、イメージが浮かんだときにモノが作れないと、思考が止まりなかなか前には進めないものである。そんな不便を解消し、いつでもモノを作れるようにしたのが、独自に開発した「MachiningStar25」というCAM(コンピュータ支援による自動製作)ソフト。パソコンと連動して切削機が動くことで、試作品が短時間で作れるという。

 同社の主な収入源はテープライトに代表される装飾照明とホテルや劇場、店舗などに使われる間接照明の両照明事業だが、実はもう一つ、通電駆動型形状記憶合金「バイオメタル(商品名=人工筋肉の意味)」の実用化という将来性のある事業にも取り組んでいる。「夢、ただ今実験中」という同社のスローガンに、企業の姿勢と勢いが表れている。

トキ・コーポレーション株式会社
東京都大田区大森北3-43-15 電話03-5763-6121