グローバルな視点を持ち、若者から人気の田村耕太郎さん、そして、大学生を対象にベンチャーファイナンスの授業も持っているカリスマファンドマネジャーの藤野英人さん。独自の視点を持つ2人に世界で生き抜くために必要なことをテーマに語っていただきました。今回は最終回です。

寄付から見えてくる
日本人の素顔

藤野:日本人って自分たちのことを誰よりもお金に対して潔癖で、誰よりも平和主義者だと思っていますよね。でも数字から見える日本人は、500兆円も抱え込むほどお金が大好きで、寄付だってしません。

 たとえばアメリカでは3人に2人が寄付をしていますが、日本では逆に3人に2人が寄付をしていません。「税制が違うからだ」と反論する人もいますが、収入との比較でいえばアメリカのお金持ちの寄付金額って、大きなものではないです。むしろ低い年収の人のほうが身を削って寄付をしていますよね。

どんな人でもできる「投資」は<br />社会を変えるアクションである!田村耕太郎(たむら・こうたろう) 前参議院議員。エール大学元上席研究員、ハーバード大学元研究員などを経て、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で唯一の日本人研究員を務めた。日本人政治家として初めてハーバードビジネススクールのケースの主人公となる。早稲田大学卒業、慶応義塾大学大学院修了(MBA取得)。デューク大学ロースクール修了(法学修士)、エール大学大学院修了(経済学修士)、オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了、ハーバード大学ケネディスクール 危機管理プログラム修了、スタンフォード大学ビジネススクールEコマースプログラム修了。東京大学EMP修了。国立シンガポール大学公共政策大学院名誉顧問、新日本海新聞社相談役。2002年から10年まで参議院議員を務めた間、内閣府大臣政務官(経済財政、金融、再チャレンジ担当)、参議院国土交通委員長などを歴任。シンガポールの国父リー・クアン・ユー氏との親交を始め、欧米やインドの政治家、富豪、グローバル企業経営者たちに幅広い人脈を持つ。世界の政治、金融、研究の第一線で戦い続けてきた数少ない日本人の一人。著書にベストセラーになった『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』(マガジンハウス)、『君は、世界を迎え撃つ準備ができているか?』(中経出版)などがある。

田村:本当にそうなんですよ。オバマ大統領の選挙キャンペーンのトップに会ったときにも、同じようなことが話題に出ました。この前の大統領選ではトータルで300億円近くの寄付が集まったそうですが、ほとんどが低所得の人からの寄付だったそうです。税のことについても聞いたのですが「お金持ちも、そうでない人も、節税対策で寄付をする人はほとんどいない」と言っていましたね。

藤野:日本ファンドレイジング協会が発行している『寄付白書』を読むと、実は、日本で一番寄付をするのは内職をしている人。逆に一番寄付をしないのは、安定収入をもらっている会社員だったりするんです。なんと100人中10人しか寄付をしない。誤解をしている人も多いと思うのですが、年収が低い人のほうが社会を支えようと思っているし、頑張ってもいることが多い。

田村:社会を支えたいとか、応援したいという思いが寄付という形になっているわけですよね。当時は候補者だったオバマに寄付をした低所得の人たちも、「オバマの志を応援したいから寄付をした」ということだったそうです。

ダメ経営者に退陣を!
新陳代謝が起こりにくい日本の市場

藤野:投資についても同じような誤解があります。「無」から「有」をつくりだすように投資を考えている人がよくいます。何もないところから積み上げていくというかね。でも投資って、そんなことじゃないんです。

 投資家の仕事って、マーケットの穴を見つけて埋めていくのを手伝うことなんです。田村さんがこの前お話されていましたが、世の中って完全ではないですよね。マーケットもそうです。だから「もっとこうしたらいいのに」というチャンスがいっぱいある。

 そんな穴を見つけてきて、埋めるのが起業家の仕事であり、その起業家を応援するのが投資家の仕事です。しかもそうすることで、たくさんの人にも喜んでもらうことができます。

田村:大事なのはそこですよね。投資というとギャンブルのように考える人がいますが、「世の中をよくしよう」と思って頑張っている経営者を応援する気持ち。それが投資だと私は思うんです。

 アベノミクスもいいですけれど、いま一番日本の市場を盛り上げていくのに必要なのは、ダメな経営者を退出させるための仕組みじゃないでしょうか。日本ではその新陳代謝が非常に起こりにくいですよね。

 ベンチャーがたくさん生まれることも大切です。でも日本にはいいものをつくっている会社が、すでにたくさんあるわけです。そうした会社がさらに効率的な経営に変わるインパクトって相当大きいですよね。それを実現できるのが「市場の力」です。そのためにも、ダメな経営者たちをキックアウトする仕組みが、日本の株式市場には必要だと私は思いますね。

藤野:同感です。