語学やITスキル、資格などキャリアアップのために夜間や休日にスクールに通うビジネスマンは多くいますが、特定の分野についてさらに突き詰めたいと考える人にとって、大学院の社会人入試は選択肢のひとつとなっています。「大学でやり残したことがある」「仕事を始めてより詳しく学びたくなった」など、大学院が頭をよぎったことのある人も多いのではないでしょうか。
大学院は「小論文」と「研究計画書」のみで受験できる場合も多く、社会人に向けて大きく門戸が開かれています。さて「研究計画書」とは?この謎の提出必須書類についていちはやく解説した書籍『研究計画書の考え方』が今回の1冊です。

国の重点化政策で定員増
社会人からも入りやすくなった大学院

大学院の社会人入試に必須<br />「研究計画書」の意義と役割がわかるロングセラー妹尾堅一郎著『研究計画書の考え方』
1999年3月刊行。ダイヤモンド社でかつて発行していた、キャリアアップをテーマにした月刊誌『Executive』に掲載されていた好評連載を書籍化したものです。

 文科省が大学院重点化政策を打ち出したのは1991年度でした。東京大学や京都大学など、旧帝国大学の教官は全員大学院所属となり、1、2年生の教養部が廃止されて新しい学部が生まれました。「国際文化××学部」といった名称はこのころから増えています。そして大学院生の定員が大幅に増えることになったのです。

 以来22年、大学院修了者は増え続け、同時にオーバードクターも増え続けています。もちろん文科系と理科系に違いはあるものの、人数が増えれば高いレベルの院生も増えるでしょうが、「本当にマスター?」というレベルの院生も増えることになります。これはいたしかたないところでしょう。文科省も最初からわかっていたに違いありません。

 大学院生の数は、2012年の調査(文科省)によると修士課程16万8903人(人文・社会科学系約3万人)、博士課程7万4316人(同約1万3000人)、専門職2万70人(同約1万7000人)。この数年はやや増加傾向です。それにしても膨大な数ですね。

 社会人大学院生も増えています。各大学の大学院入試要項を見ると、「一般入試」と「社会人入試」があり、「社会人入試」は「研究計画書」の提出と「小論文」試験と面接だけで合否が決まる大学もあるようです。筆記試験は「小論文」だけ、なんてこともあるのでしょう。英語くらいはあるのかな。

 文科系についていえば、門戸は想像を絶するほど広くなり、ほとんどだれでもどこかの大学院に入れる時代なのです。学費は国立も私立も大きな差はなく、国立で年間50万円台、私立で80万円台です。専門職大学院は別で、うんと高く、100万円を軽く超えます。