トップたる者は<br />自らが最も得意とすることを<br />行わなければならないダイヤモンド社刊
1890円(税込)

「トップたる者が身につけるべき第一の習慣が、なされるべきことを考えることである。これを考えないならば、いかに有能であろうとも成果を上げることはできない」(ドラッカー名著集(1)『経営者の条件』)

 1966年にドラッカーは、現代の働く人たち全員のために、万人のための帝王学『経営者の条件』を書いた。原著名が、『ザ・イフェクティブ・エグゼクティブ(できる人)』だった。30回読んだという人もいれば、読むたびに傍線を引いていたら線を引く所がなくなり、傍線だらけの本が3冊になったという人もいる。

 38年後、亡くなる前年の2004年、94歳のときには、これを補完するかのように、「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌に、「ホワット・メイクス・アン・イフェクティブ・エグゼクティブ(できる人になるには)」を書いた。

 経営は人であるとの信念に生きた人だった。日本人が惚れるのも無理はない。

 ドラッカーによれば、成果を上げる人は、「外交的な人から内向的な人、おおまかな人から細かな人までいろいろだった」という。しかし彼らのあいだには、いくつかの共通点があった。そしてその筆頭が、なされるべきことを考えるという習慣だった。

 ジャック・ウェルチはGEのCEOへの就任が決まったとき、すぐにカリフォルニアに飛んでドラッカーに会った。2人の会話から生まれた経営戦略が、あの有名な選択と集中の戦略、「1位2位戦略」だった。

 GEにとってなされるべきことは、世界で1位2位になる価値のない事業からは手を引くことだった。この顛末は、日経新聞の「私の履歴書」にドラッカーも書いているし、ウェルチも書いている。

 しかしドラッカーによれば、じつは、ウェルチはもう一つ別のことを考えていた。GEにとってなされるべきことをいくつか考えた後、自らが得意とするものはどれかを考えた。得意でないものはトップマネジメント・チームの誰かに任せた。

「トップたる者は、自らが得意とするものに集中しなければならない。トップが成果を上げれば、組織が成果を上げ、トップが成果を上げられなければ、組織も成果を上げられないからである」(『経営者の条件』)