日本はこのまま原発再稼働に向けて突進していくのだろうか。原発事故後、未だ2年そこそこしか経たないのに。まるで原発事故などなかったような動きになっている。

 驚いたのは5月15日の参院予算委員会での首相答弁だった。

「原発再稼働に向けて政府一丸となって対応し、できるだけ早く実現していきたい」

 明確な“再稼働ありき”である。

 安倍晋三首相のこの答弁は、国内ばかりでなく諸外国にも大きな波紋を投げかけただろう。

 おそらく、今回の原発事故が自民党政権下で起きたならこうはならなかった。自民党政権下でも民主党と同じように脱原発の方向に向かっていたはずだからである。

 民主党政権の「2030年代に原発ゼロ」の方向は正しいが、いかにも及び腰でそれが確定的になる前に無意味な解散総選挙に持ち込んでしまった。自民党は政権の座に就くとこれを難なく撤回し、あたかも、「再稼働による経済成長」か、それとも「脱原発による経済停滞」かの二者択一を参院選で国民有権者に迫ろうとしている。

 だが、それで通ると考えているとしたらいかにも読みが甘い。なぜなら「脱原発への国民の決意は決して風化しない」からである。

 脱原発の声が小さくなったり、デモの動員数が減ったりしたからと言って、それが「できるだけ早く」再稼働することを望んでいるわけではなく、決意が揺れていると見るのは間違いだ。

 ここで脱原発への方向を確定しなければいつそれをするのか。今回以上の原発事故を待つことにでもなれば、そのときは取り返しがつかないことになる。