力強い走りと環境性能に優れた次世代ディーゼル車が相次いで日本市場に投入される。新車販売比率でディーゼル車が5割以上を占める欧州に対し、日本では1%にも満たないだけに、ハイブリッド車に並ぶ、新しいエコカーとしての普及に期待が寄せられるが、思わぬコストアップという逆風が吹き始めている。

 「ほら、真っ白」。居並ぶカメラの放列を前に、白い手ぬぐいを誇らしげに広げるのは、日産自動車の志賀俊之最高執行責任者(COO)。洗濯機の宣伝を思わせる光景だが、むろんそうではない。

 9月上旬、クリーンディーゼルと呼ばれる、国内初の次世代環境対応型のディーゼルエンジンを搭載したSUV「エクストレイル」発表会でのパフォーマンスだ。

 ディーゼルエンジンは、騒音や振動とともに黒煙をまき散らす“悪のイメージ”が根強い。志賀COOは、マフラー部分に白い手ぬぐいを当て、その優れた排ガス浄化性能をアピールしたのだ。

 クリーンディーゼル車とは、経済産業省の定義では、来年10月導入の新排ガス規制に対応するディーゼル車。メルセデス・ベンツが年内もしくは来年早々にも日本市場に投入予定。ホンダや三菱自動車、フォルクスワーゲンなどは来年以降、アウディや富士重工業は2010年以降にも投入する計画だ。

 ディーゼルエンジンは、その力強い走行性能に加え、ガソリン車に比べ、燃費、二酸化炭素排出量共に2~3割優れる。ゆえに、現在の欧州市場では環境性能に優れたエコカーとして好まれ、新車販売に占めるディーゼル車比率は5割以上、フランスやベルギーなどのように7割以上の国もある。

 まさに、日本も今年はディーゼル元年。経済産業省が税制優遇策を計画するなど、政府も積極的に普及を推進。「ハイブリッド(HV)車と並ぶエコカーの1つとして普及させたい」という期待の声も業界内にはある。

 事実、明るい話はある。メルセデス・ベンツが06年に日本市場に投入した新型ディーゼル車(現状の排ガス規制対応)の場合、当初2割前後だった同クラス車のディーゼル車比率が08年6~8月は3割に増えた。

 しかも、ディーゼル車購入者は高所得者層が多く、メルセデス・ベンツ日本では「ディーゼル車は、走行性能に優れたエコカーというイメージが定着してきた」と見る。

 ディーゼル乗用車の新車販売比率が約0.1%と限りなくゼロに近い日本国内への投入は、利用者の選択の幅を広げる点で喜ばしい。