鈴木英男
日新製鋼 鈴木英男社長
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──鉄鋼業界の現状をどう見るか。

 一時は4割に落ち込んだ稼働率は8~9割に回復した。しかし、エコカー補助金制度や家電エコポイントなどの一時的な景気浮揚策に支えられている面も大きく、楽観はできない。

 また、鉄鋼業界は大きな構造変化に直面している。今後、生き残りをかけた競争はさらに厳しさを増すだろう。

──どのような構造変化が起きているのか。

 一つは、東アジアの鉄鋼市場の需給バランスが大きく崩れ始めていること。世界の粗鋼生産量が12億~13億トンで、そのうち約4割を中国が占めている。いずれ、中国で生産された鉄鋼製品は、内需だけでは消化し切れず、東アジアの各国市場へと大量に輸出されるだろう。

 二つ目は、中国の粗鋼生産能力の増大に伴い、鉄鉱石、原料炭、原油などの価格がさらに上昇することだ。自動車、家電メーカーをはじめとするユーザー企業も厳しい競争を強いられている。コスト上昇分を製品価格に転嫁することは難しい。