「東京都内、中国人が多いですね。私の住んでいる都内のマンションも中国人が増えました。一目見ただけで中国本土の人とわかりますね。はっきりした理由はありませんが」

 かつて上海で長い付き合いだった友人から、先日、こんなメールをもらった。

 円安の影響だろうか、確かに近頃、アジアからの訪日客や滞在者が増えた。その中には中国人もいれば、タイ人もいれば、香港人もいる。「一目見ただけですぐ出身地がわかる」のは、メールをくれたご本人の中国経験の長さを物語るものでもある。

 一方、国際社会といわれる上海にも、日本人をはじめ多くのアジア人が住んでおり、その中には“香港人”も少なくない。やはり、彼らの商売も中国大陸という大市場なしでは済まないようだ。

 上海に住む香港人はビジネスでの長期滞在者が多いが、その生活スタイルはすでに欧米流だ。各国の奥様たちが集まるパーティでも、中国人のグループには入らず、欧米人や日本人とおしゃべりし、「私はあなたたちとは違う」と無言のオーラを放つ。

 一方、筆者は別の食事会で、垢抜けして知的な中国人女性に出会った。環境問題でも意気投合、「香港人かと思いましたよ」と言うと、「ありがとう」とお礼が返ってきた。ここでは「香港人みたい」は一種の褒め言葉でもあるようだ。

 香港人と中国人は、似て非なる存在である。英国領香港は中国に返還され、「一国二制度」の下に置かれてからすでに16年の歳月が流れたが、昨今は“香港人”というアイデンティティに帰属感を高める地元市民が増えているのである。

7月1日に10年ぶりの大規模デモ
反発の理由は中国当局の介入だけでない

 香港で7月1日、民主派団体主催の大規模デモが行われた。この日は香港返還の祝日になっているせいか、こうしたデモは毎年行われている。しかし、現地メディアによれば、今年のデモ参加者数は50万人と報じられ、10年前の2003年に匹敵する規模にまで拡大した。